"凶悪犯と殺処分寸前の猫" 第6話
い声でゆっくり話しかけろ。あと、飯を置いたら背を向けて座ってろ。見張られてるとうとえねえんだよ」
かつてギャングの幹部として部に銃の扱いを教えていた男が、今や受刑者仲に猫の接し方を講義していた。
マーカスは言われた通りに実践し、翌にはラスカルが初めてからフードをべたと言って、子どものように相好を崩した。
変化は、ウイルスのようにJブロックを侵していった。
プログラムに参加していない受刑者たちも、清掃や運のに猫たちの姿を見かけると、を止めて見入るようになった。
「おい、あいつの、見ろよ」
あるの運、誰かが指を差した。
ヘンリーの飼っている老猫「スモーキー」が、鮮やかな青いニットのベストを着て、リードをつけられて庭を散歩していたのだ。
「ヘンリー、そのどうしたんだ?」
「編んだんだよ」初老の元詐欺師が、自げに胸を張った。「のコンクリートは老猫の関節に障るからな。図で編み物の本を借りて、夜勤のに編み針をかしたのさ」
「すげえな……おい、俺にも編み方教えてくれよ。うちのミケにも赤いのを着せてやりてえ」
粗暴犯のジャックが、恥ずかしそうに毛糸の束をポケットから覗かせた。
かつて武器の隠し所や麻薬の密輸ルートを話しっていた運の片隅が、いつのにか「どの毛糸が猫の肌に優しいか」
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「どの爪とぎが番持ちするか」を議論するサロンへと変わっていた。
声をす者がいなくなった。声をすと、猫たちがを伏せて怯えるからだ。
廊をる者がいなくなった。音を響かせると、猫たちがケージに隠れてしまうからだ。
「おい、てめえ! 廊にタバコのを落とすんじゃねえ! 猫が吸い込んだらどうすんだ!」
麻薬毒のカルロスが、入りの受刑者を鳴りつけた。守が何百回注しても直らなかったポイ捨てが、受刑者自のによって掃された。
刑務所内の規律違反件数は、比でパーセント減した。
巡回する守たちも、警棒を握るを緩めざるを得なかった。鉄格子の向こうから聞こえてくるのは、罵声や舌打ちではなく、受刑者たちが猫をあやす抜けな裏声と、微かな寝息だったからだ。
だが、この奇跡のような平穏を、苦々しいいで見つめる者たちがいた。
ペンドルトン刑務所のにある保員控。
煙がち込める暗い部で、副所のミラーが数名の古参守たちを集めていた。テーブルのには、受刑者たちが猫のために作成した作りの玩具や、編みかけのセーターが置かれている。
「茶番だ」
ミラーが吐き捨てた。
「凶悪犯どもが猫を抱いて涙を流す? 反省したふりをして減刑を勝ち取ろうとする、あいつらの浅恵に決まっている。
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リチャード所は完全に狂った。このままでは、ペンドルトンは全米の物笑いの種だ」
「しかし副所、現に所内の暴力事件は激減しています」若い守がおずおずとを挟んだ。「Jブロックの空気は、以とは見違えるほど落ち着いていますが……」
「馬鹿者!」ミラーが机を平で叩いた。「臭いものに蓋をしただけだ! あいつらの本質は何も変わっていない。度を殺めた獣は、獣のままだ。……引きを引いてやれば、すぐにボロをす」
ミラーの線が、Jブロックの受刑者名簿の箇所に留まった。
『トマス・“レイザー”・スローン。所属:アーリアン・ブラザーフッド(至主義ギャング)。罪状:第級殺』
スローンは、今回の猫プログラムから素良を理由に除された、Jブロックの裏の顔役だった。彼らは所内での麻薬密売の利権を握っていたが、猫プログラムの導入以、受刑者たちがトラブルを恐れて麻薬からを引き始めたため、莫な密売利益を失いつつあったのだ。
「スローンを呼べ」ミラーがたく命じた。「奴らに、自分たちがどこにいるのかをいさせてやる」
その穏な胎を、アンソニーはまだる由もなかった。
そのの午、アンソニーの独に、いがけない訪問者があった。APLの代表であるマレア医師が、定期健診のためにオレオのを訪れたのだ。