"凶悪犯と殺処分寸前の猫" 第3話
全員が、によって裏切られ、殴られ、飢えさせられ、を完全に閉ざしてしまった子たちです。彼らにとって、は『自分を傷つける怪物』になりません」
マレアはテーブルのにつのキャリーケースを置いた。
格子窓の奥から、く濁った威嚇の唸り声が響いた。
「シャーッ! グルルルル……!」
ケースがガタガタと激しく揺れ、隙から鋭い爪のえた黒いがびした。
「この子がオレオです。シェルターに来てヶ、誰のからも餌をべず、づくスタッフ全員に噛みつきました。触ることはおろか、目をわせることすら困難です。……アンソニー受刑者、あなたがこの子の担当を志願されたそうですね?」
アンソニーはちがり、ゆっくりとキャリーケースのへみた。
「おいおい、カーター、やめとけよ。その傷だらけのをこれ以ズタズタにされたいのか」
ろでジャックが嘲笑した。
アンソニーはケースのに屈み込み、格子の隙に顔をづけた。
「フーッ! シャアッ!」
オレオは背の毛を逆て、をろに倒して威嚇した。骨と皮ばかりに痩せ細り、首の周りには古いロープで擦れた赤黒い傷痕が残っている。瞳孔は限界までき、恐怖のあまり全を刻みに震わせていた。
アンソニーはをさなかった。ただ、そのの瞳を真正面から見つめ返した。
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「……怖えよな」
アンソニーのから漏れたのは、く、嗄れた呟きだった。
「触られたら痛え目に遭うって、そうってんだろ。……分かるぜ。俺もずっとそうだったからな」
オレオの威嚇の唸り声が、ほんの瞬だけ途切れた。猫は怪訝そうに首を傾げ、目のの巨な男の顔を観察するように見つめた。
「カーター受刑者、規則を伝えます」マレアが厳格な声で告げた。「猫に対する切の暴力、威圧、声での鳴りつけを禁じます。もし猫に危害を加えた、即座にプログラムは止、あなたには罰送りの処分がされます。よろしいですね?」
「ああ」
アンソニーは線をオレオからさぬまま、く頷いた。
属製のキャリーケースが、アンソニーの頑丈な腕によって抱えげられた。さはキロにも満たなかったが、アンソニーにとっては、これまで持ちげたどんなバーベルよりもく、頼りなくじられた。
アンソニーの独(セル)は、幅フィート、奥きフィートの狭な空だった。コンクリートの壁には窓がなく、井の網越しに蛍灯のたいが落ちている。
部の隅に、APLから支された属製の型ケージ、プラスチックのトイレ、爪とぎ、そしてつのステンレス製ボウルが設置された。
キャリーケースの扉がかれた瞬、オレオは黒い稲妻のような速さでケージの最段に潜り込み、トイレのに体を押し込んで丸まった。
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を平らに伏せ、を剥きしにしてアンソニーを睨みつける。
「おい、アンソニー! どうだ、猛獣使いの気分はよ!」
通を巡回していた守が、鉄格子の隙から警棒でコンクリートを叩いた。
「にはそのバケツ杯の猫の毛が、おの血で染まってなきゃいいがな」
「失せろ」
アンソニーが振り返りもせずに吐き捨てると、守は舌打ちをしてっていった。
静寂が戻った独ので、アンソニーはベッドの縁に腰をろした。オレオはケージの隅で呼吸を荒くし、瞬たりとも警戒を解こうとしない。しでもアンソニーがじろぎをすれば、「シャッ!」と鋭い摩擦音が空気を切り裂いた。
「腹が減ってんだろ」
アンソニーはちがり、マニュアルにかれていた通り、ドライフードを握りボウルに入れた。さらに、清潔なをもうつのボウルに注ぎ、ケージの入りのすぐ内側に置いた。
オレオはを振りげ、ボウルを叩き落とそうとした。ガシャンとい音が響き、がにび散る。
「……そうかい。気にわねえか」
アンソニーは鳴りもせず、散らばったを雑巾で拭き取った。
「好きにしろ。いたくなけりゃうな。だが、ここはよりは全だ。誰も棒切れで殴ってきたりはしねえよ」
アンソニーはベッドに横になり、井のシミを見つめた。
夜が訪れ、の消灯ブザーが鳴り響いたも、独には苦しい空気が張り詰めていた。