"入院中、母が勝手に老人ホームへ送られていた" 第12話
現は郊の古い賃貸アパートに両親を引き取り、痛と借を抱えた父親と、毎愚痴を喚き散らす母親の世話に追われながら、非正規の配送ドライバーとして朝から夜までハンドルを握り続けているそうだ。
かつて妻の母親に押し付けようとした「介護の獄」を、今度は自分たち自でわい尽くす因果応報。
だが、その報復劇の結末に、菜緒のが波つことは度もなかった。
あのたちは、自らが選んだき方の結果をきている。
そして自分と母もまた、自らので選び取った尊厳ある活をきている。ただそれだけのことだった。
「なお、が届いてるよ」
母が郵便受けから取ってきた封筒を差しした。
差は、菜緒が勤務する商社の事部だった。来期からの主任昇格と、規プロジェクトへの抜擢を告げる辞令通だった。
自分の力で働き、自分の性とを使って得た確かな対価。
誰かに無されることもなく、誰かの浪費の犠牲になることもない、自分と母の未来を守るための誇りい糧。
「お母さん、私、来からし帰りが遅くなるが増えるかもしれない」
「いいよ、いいよ。自分の仕事をいっきりやりなさい。事は私ができる範囲でやっておくから。困ったは、ヘルパーの佐藤さんにお願いすればいいんだからね」
母がカラカラと笑った。
頼りうことと、依しうことは違う。
お互いの自を尊し、できない部分だけを温かく補いう。失われかけた親子の絆は、度壊されかけたからこそ、以よりもずっと固で、通しの良いものへとまれ変わっていた。
縁先の庭では、母が植え替えた桜が、爽やかなに吹かれて優しく揺れていた。
菜緒は空を見げ、く、きく息を吸い込んだ。
自分のを、自分のでいていく。
その当たりで、何よりも尊い自由のが、の青空いっぱいに広がっていた。