"入院中、母が勝手に老人ホームへ送られていた" 第2話
壊れたスマートフォンを何度操作しても起することはなく、母からの連絡を病で待つは耐えがたい苦痛となっていた。健太は昨も「母さんと話した。元気にしてるから配するな」と繰り返したが、何に話したのか、具体に母が何をしていたのかという細部はすべて曖昧に濁されていた。
銭入れから取りした百円玉を投入に入れ、暗記している実の桁の番号をプッシュした。
ツルルルル……ツルルルル……。
受話器の向こうで、無質な呼びし音が規則正しく鳴り響く。
回、回。
どれだけ待っても、受話器ががる気配はなかった。留守番話サービスに切り替わることもなく、ただい呼びし音だけが虚しく鼓膜を震わせる。
円玉が落ちるカチャリという音とともに、通話は制に切断された。
菜緒は受話器を置き、壁にをついて荒い息を吐きした。刻は午を過ぎたところだった。母は膝が痛むため、所のスーパーがく直の午にゴミしや簡単な庭仕事を済ませ、差しのいは居の座子でラジオを聴きながら過ごすのが課だった。この帯に話にないことなど、に度あるかないかだ。
「……お母さん、どこにいるの」
病に戻り、ベッドの縁に腰掛けて考えを巡らせた。
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所の友とお茶をみにかけているのか。あるいは、痛むで無理をして買い物にかけ、途で倒れてしまったのではないか。最悪の像がをもたげ、胸が締め付けられる。
正午、健太がコンビニのビニール袋を提げてふらりと現れた。
「ゼリー買ってきたぞ。欲あるか?」
「健太、お母さんにいつ話したの?」
菜緒は差しされた袋に目もくれず、夫の目をまっすぐに見据えて問い詰めた。
「は? だから昨の夜だって言っただろ」
「私、さっき公衆話から実にかけたの。午ずっと鳴らしたけど、度もなかった」
健太の眉が瞬だけ引きつり、に持っていた着を乱暴に丸めてパイプ子に放りした。
「買い物にでもってんだろ。寄りだってずっとにいるわけじゃないんだから、いちいち騒ぎてるなよ」
「お母さんは午にのなんてしないわ。が悪いのをってるでしょう? 事故のこともってるはずなのに、病院に度も話をかけてこないなんて絶対におかしい」
「……たまたまだよ」
健太は骨に苛ちを滲ませ、病の窓のへと線を逸らした。
「菜緒、おさ、入院して気がってるのは分かるけど、俺を疑うような調はやめろよ。俺がわざわざ仕事のに様子見にってやってるのに、謝どころか尋問かよ」
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「様子を、見にったの?」
菜緒の問いに、健太はを噤んだ。
「昨、あなたは『話した』って言ったわよね。実へ直接ったの?」
「……ってないよ。話で話したって言っただろ。言葉の揚げを取るなよ」
語気を荒らげる夫の態度に、菜緒の背筋をたい悪寒が駆け抜けた。
何かがおかしい。
夫は単に面倒くさがっているのではない。実の母の状況について、図に何かを覆い隠そうとしている。連れ添った直が、警戒の警報をけたたましく鳴らしていた。
菜緒はこれ以、夫を追及するのをやめた。ここで問い詰めても、健太は殻に閉じこもり、さらに嘘をねるだけだ。
「……そう。悪かったわ。配しすぎたみたい」
菜緒は静かにを横たえ、毛布を胸まで引きげた。健太は堵したようにさく息を吐き、「じゃあ、会社戻るから」と言い残してに病をてった。
扉が閉まる音を確認すると、菜緒はベッドサイドの引きしから、入院診療計画の裏とボールペンを取りした。
・健太の証言:事故当夜および昨夜、母と話で通話。「丈夫」としか言わない。 ・事実:午の固定話は通。母からの病院への連絡は切なし。 ・健太の矛盾:訪問の無について言葉を濁し、追及されると激昂する。
震えるで事実だけをき連ねた。
夫の言葉を無条件に信じる段階は終わった。
自分の体調を回復させ、こので実へ向かい、真実を確かめなければならない。