"消えた子猫と、花壇の頑固おじさん" 第16話
「じゃあ、決まりだな。俺たち匹で、この公園のパトロールを続けようぜ」
翌朝、半。 夜けの空が、の平線から美しい陽のような青へと染まり始める頃。 くのから、チャリン、と軽な自転のベルの音が響いた。
「おはよう、こんちゃん、郎ちゃん!」 黄いウインドブレーカーを着たみどりさんが、笑顔で自転を乗り入れてくる。
そして、そのろから――。 首にタオルを巻き、やり用のホースをにしたさんが、靴を鳴らして歩いてくる姿が見えた。
「おはよう、武内さん。今朝もいな」 「おはようございます、さん! 今もいいお気ですね」
たちが挨拶を交わす。 僕たちを排除しようとしていたが、僕たちを「域の員」として受け入れ、共に朝を迎えてくれている。 ステンレス皿に盛られたご飯の匂いにを鳴らしながら、僕は力いっぱいに尻尾をピンとてた。
僕たちは、見捨てられた野良猫じゃない。 このの空ので、され、見守られながらきている、誇りき「域猫」なんだ。
季節は巡り、が訪れた。
公園の側、あの赤レンガで囲まれた壇には、奇跡のような景が広がっていた。 ワイヤーネットの隙から力く茎を伸ばした無数のチューリップが、赤、黄、、ピンクと、鮮やかな輪のを斉に咲き誇らせていたのだ。
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に揺れるびらの波を、散歩の保育園の子供たちが指を差して歓声をげている。
壇のには、猫の跡はつもない。 しれた公衆トイレの裏、枠で囲まれた砂には、今朝も僕と郎が規則正しく用をしたの、綺麗な丸い窪みが残されていた。
午分。 「こんちゃん、郎ちゃん、ご飯よ!」 みどりさんの声に呼ばれ、僕と郎はサクラのの根元から駆けし、並んで朝ご飯をべ始めた。
「さん、見てください! チューリップ、満ですね!」 みどりさんが振り返って声をかける。 壇の雑を抜いていたさんが、腰を叩きながら顔をげ、誇らしげにい歯を見せて笑った。
「おうよ。はいろいろあったが……をかけた分だけ、はちゃんと応えてくれるもんだな」
さんは具を片付けると、僕たちのを順番にポンポンと優しく叩いた。 「おら、今もいい子にしてろよ。……じゃあな、俺はあいつの朝飯を作りに戻るからよ」
さんが軽トラックに乗って、を振りながらっていく。 僕と郎は、並んで座ったまま、そのが見えなくなるまで見送り続けた。
その頃、さんの。
階の側の畳。 遮カーテンをけた窓から、温かなの差しがたっぷりと差し込んでいた。 ベッドのの、あの古いタータンチェックの毛布ので、ふっくらと丸々太った黒の猫――クマが、きなあくびをしてをぐーんと伸ばした。
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階から、玄関の引き戸がガラガラとく音がした。 「ただいまー。クマ、腹減ったろ」
さんの声が響いた瞬、クマはピンと尻尾を垂直にて、トタトタトタッとリズミカルな音をてて階段を駆けりていった。
「ミャウ! ミャウッ!」 玄関で靴を脱ぐさんの元に、クマは激しくを擦り付ける。 さんのズボンの裾からは、の匂いと、のの匂い、そして――好きなこん兄ちゃんと郎兄ちゃんの匂いが、ふわりと漂っていた。
クマは目を細め、胸の奥からゴロゴロと、世界で番幸せな音を響かせた。
暮らす所は、もう同じじゃない。 触れうも、見げる井も、別々になってしまった。 けれど、僕たちのは、今も本の温かな糸でしっかりと結ばれている。
同じ太陽のを浴び、同じのをじながら。 僕たちは今も、それぞれの所で、に満ちたしい朝をきている。