"消えた子猫と、花壇の頑固おじさん" 第11話
みどりさんは元のクリアファイルから、術証のコピーと活記録の束を慎に取りした。
「餌も置きりにはせず、朝のわずかなでべ終わるのを見届け、べ残しと周辺のゴミはすべて毎持ち帰っております。フンについても、見回りの際に回収し、消臭液で消毒をっております。ですが……壇を荒らしてしまったことは、私どもの管理の至らなさです。本当に申し訳ありませんでした」
再び々とをげるみどりさん。しかし、度化した民たちのは、類や理屈で簡単に溶けるものではなかった。
「理屈はいいんだよ」 荒井会が腕を組み、徹に言い放った。 「結果として、民が迷惑を被っている。区の緑課も、苦が収まらないなら来に捕獲ケージを仕掛けて制撤すると通告してきた。代限りだか何だからんが、ここはの公園だ。猫の処じゃない」
集会所のを、苦しい沈黙が支配した。 みどりさんは唇を噛み締め、膝のの類を見つめたまま、微かに肩を震わせた。方は誰としていない。政の期限まで、あとらず。
その、集会所の引き戸がガラガラと乱暴な音をてていた。
「……おいおい、ずいぶんと景気のいい魔女裁判をやってるじゃねえか」
作業着のを落とさぬまま、靴を履いた柄な男が、のまま板のに踏み込んできた。
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壇の管理を任されている頑固者の老――さんだった。
部の線が、の乱入者へと集まった。 荒井会が眉をひそめ、怪訝そうに声をかける。
「さん……? ちょうど良かった、被害者のあなたからもガツンと言ってやってください。あんたが塩にかけて植えたチューリップの球根を根こそぎ台無しにされたんだ、腹の虫が収まらんでしょう」
さんは答えず、ゆっくりと部の央へと歩みた。 首に巻いたぬぐいで額の汗を乱暴に拭い、みどりさんの隣の空いていたパイプ子をギィと引いて腰をろした。
「腹はったさ」 さんはく太い声で呟いた。 「せっかく腰を痛めながら植えた球根を掘り返されたんだ。最初にあいつらを見つけたは、箒でぶっ叩いて追いしてやろうとったくらいだ」
民たちのに「ほら見たことか」という堵のざわめきが広がった。 だが、さんはそこで言葉を止めず、荒井会の目を真正面から見据え返した。
「だがな、荒井さん。あの猫共は、を台無しにしてやろうとってを掘ったわけじゃねえんだよ」
「……何?」
「猫ってき物はな、ふかふかの柔らかいを見つけりゃ、本能で掘っちまうんだよ。爪を研ぎ、体を擦り付けて寝転がる。そこに球根が埋まってるかなんて、あいつらに分かるはずがねえんだ」
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さんは作業着のポケットから、あの赤茶の擦り切れた猫の首輪を取りし、机の板のにコトンと置いた。古びた真鍮の鈴が、微かに涼やかな音をてる。
「俺は昔、飼った猫をくした。あいつも掘りが好きでな、俺が事にしてた盆栽を何度もひっくり返されたよ。そのたびに鳴り散らしたが……あいつがんじまった、のついた爪痕を見て、俺は泣いたよ」
民たちが息を呑み、静まり返った。
「あいつらは言葉を持たねえ。文句も言えねえし、言い訳もできねえ。腹が減れば餌をい、寒けりゃを寄せってきる。それだけの命だ」 さんは、隣で固まっているみどりさんを瞥した。 「武内さんはな、あの嵐のも、ずぶ濡れになりながら自転を漕いで来てたよ。自分がざらしになって、猫に傘を差してやってた。散らばったパウチをから拾い集め、をげて回ってた。……あんたらのに、そこまでして命のケツを拭こうとした奴がいるか?」
荒井会の顔が赤く染まり、元が引きつった。 「し、しかしさん、実際に公園の環境が悪化しているのは事実だ。論だけで野良猫を許すわけには――」
「論じゃねえ、落としどころの話をしてるんだよ!」 さんが机をのひらでドンと叩いた。頑丈な机が激しく揺れた。
「追いせば解決するのか? この公園から猫を消したら、あいつらはどこへく? 隣の町内へ逃げ込んで、また別の壇を掘り返すだけだ。