"消えた子猫と、花壇の頑固おじさん" 第6話
昨、あのたいのに取り残され、濡れた体を乾かせないまま夜の気に晒されたのだ。
「ニャオオオオオン!!」
僕は茂みのから、今までにないほど張り裂けんばかりの声で叫んだ。 仲を呼ぶ声。危をらせる、命がけの叫び。
を掻き分ける激しい音がづいてきた。 「こんちゃん!? どこにいるの!?」
みどりさんが茂みを押し広げ、暗がりの奥のクマの姿を捉えた瞬、その顔からすべての血の気が引いた。
「くまちゃん……っ!!」
みどりさんはだらけの面に躊躇なく膝をつき、震える両を隙の奥へと差し入れた。 いつもならに抱きげられそうになると警戒してび退くはずのクマが、されるがままに、ぐったりとしたみとなって持ちげられた。
「体が……燃えるようにい……! 呼吸が浅いわ……!」
みどりさんは着ていたフリースのベストを脱ぎ、クマのさな体を包み込んだ。 クマのさなから、途切れ途切れの「ミィ……」という掠れた声が漏れ、そのまま力なく首が垂れがった。
「病院へかなきゃ……! 今すぐかないと、この子……んじゃう!」
みどりさんがクマを抱きしめ、自転へ向かって駆けした。 僕と郎も、必になってそのを追った。 だが、公園ののアーチのところで、刈り用のハサミを持ったさんがちはだかった。
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「おい、武内さん! どうしたんだ、そんなに慌てて!」
みどりさんはち止まり、涙で滲んだ顔をげた。
「さん……くまちゃんが……! 昨の嵐で、猫邪をこじらせて……息が……!」
さんの線が、フリースに包まれたさな塊へと落ちた。 その瞬、さんの瞳の奥に、かつて自らの腕ので息を引き取ったであろう「の記憶」が、鋭くフラッシュバックしたように見えた。
「……見せてみろ」
さんの声は、驚くほどく、研ぎ澄まされていた。 に持っていた鉄のハサミを端に投げ捨て、さんはのついた軍を素く脱ぎ捨てた。 素になった節くれだった指先が、みどりさんの腕ののフリースをそっとめくる。
現れたクマの顔は、昨のくるしさが嘘のように気に沈んでいた。 呼吸が完全に塞がれ、乾いた舌をしだけにして、喘ぐように喉をさせている。目蓋はパンパンに腫れがり、呼吸のたびにさな胸がペコペコと波打っていた。
「度の脱と肺炎だ」
さんはクマの首筋の皮膚を軽くつまみ、元に戻る速度を確かめた。皮膚はく縮こまったまま、戻らない。 「体温調節が完全にイカれちまっとる。急激にえたに、がたんだ。……このままじゃ、今の午をもたんぞ」
「そんな……!」 みどりさんの目から、粒の涙が零れ落ちた。
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「駅のノア物病院まで、自転をばせば分でけます! すぐ連れてきます!」
「待て」 さんが鋭く制した。 「自転の振は、この呼吸状態の猫には致命傷になる。肺にが回ったら発で窒息だ。……俺の軽トラに乗せろ」
「え……?」
みどりさんが信じられないものを見るように顔をげた。 さんはすでに背を向け、管理事務所の裏にめてあったい軽トラックのキーをポケットから引き抜いていた。
「突っってないでく乗れ! あそこの院は俺の同級だ、話本入れて先に酸素を用させる!」
助席のドアが乱暴にけ放たれ、みどりさんがクマを抱きかかえて滑り込んだ。 セルモーターがキュルキュルと唸りをげ、軽トラックは煙を吐きして急発した。
僕と郎は、公園のフェンスに爪をて、ざかっていくい体をただ見送るしかなかった。 タイヤが巻きげた砂埃が、朝ののにく漂っている。
郎が、く絞りすように鳴いた。 「……助かるよな、こん」 「うん。……助かるよ。あのおじさんが、連れてってくれたんだから」
僕はそう答えながらも、胸の奥を締め付けるたいを拭いることができなかった。 病院という所の恐ろしさはっている。かつて僕のの端を桜のびらのようにカットされたあの、僕を包み込んだあの消毒液の匂いと、たいステンレスの台の触。
クマは、まだ半にも満たない、さな命だ。 あの細い喉が、もう度と僕たちの名を呼んでくれないのではないか。