"棺の中で眠る娘と、吠え続けた秋田犬" 第11話
国退となったエミリーが本国へ送還された際、健が彼女のために注ぎ込んでいた巨額の資の半が回収能のまま持ちられていたことも、警察の捜査でらかになっていた。
因果応報という言葉で片付けるには、あまりにも乾いた、虚しい結末だった。
しかし、静子のには、彼らに対する憎しみも、復讐のすら残っていなかった。
もし、あの葬儀のでエミリーの笑に耐えかねてに鳴り返していたら。もし、ハチの異様な叫びを「ただの犬の粗相」として周囲の目に屈し、へ追いしていたら。自分は今も、たいので娘を失った悔に狂い、んだようにきていただろう。
自分を救ったのは、誰かへのりではない。
常識や世体という名の分い氷を突き破って、ただ目のの微かな命の兆候を信じ抜いた、あの「分の選択」だった。
正午を過ぎた頃、玄関の引き戸がカラリといた。
「お母さん、帰ったよ!」
域の子どもたちと緒に元気にしてきたが、勢いよくへ駆け込んできた。には、学の裏庭で摘んできたのであろう、さなフキノトウとタンポポの束が握りしめられていた。
「これね、ハチののに飾るの。が来たから!」
「まあ、綺麗ね。ハチ、嬉しいわね」
ハチがちがり、きな尻尾を扇のように激しく振っての顔を舐め回す。
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はくすぐったそうにをよじらせながら、子どものい笑い声を古い平いっぱいに響かせた。
その笑い声を聞きながら、静子は胸の奥に、かつてないほどで、揺るぎない温もりをじていた。
の作った法律や、社会の決めた肩きなど、命の厳粛な尊厳のには何の力も持たない。
沈黙のに宿るさ。言葉なき獣が命懸けで伝えた真実。そして、母が子のために引き裂いた絶望の。
それらすべてを乗り越えて、は確実に訪れたのだ。
「お母さん、お腹すいた! 今のお昼、なぁに?」
「の好きな、温かいおうどんよ。葱をたっぷり入れてね」
「わーい! ハチ、お母さんのうどん、すっごく美しいんだよ!」
がハチの首を抱きしめ、ハチが優しく先をすり寄せる。
解けの清らかなせせらぎが、庭の向こうの川をさらさらと流れていく。
り積もった過のしみをすべて洗い流すように、やわらかなが縁側を照らし、度と引き裂かれることのない族の元を、どこまでもるく、どこまでも温かく照らししていた。