"棺の中で眠る娘と、吠え続けた秋田犬" 第9話
同してください」
「待ってください!」
エミリーが叫んだ。その顔には、先ほどまでの傲さは微もなく、自己保の焦燥だけが醜く張り付いていた。
「私は国籍です! 領事館に連絡をさせて! これは庭内の教育よ! 虐待などではないわ!」
「教育で氷点の林に子どもを放りす親はいません」
警部補は淡に言い放ち、エミリーの腕にそっとを添えた。
「あなたの母国でも、そのような為は罪のはずです。署でじっくり伺いましょう」
健は錠をかけられたわけではなかったが、魂を抜かれた抜け殻のように、捜査員に促されるまま力なく歩きした。すれ違いざま、健は病のにつ静子に向かって、震える唇をいた。
「静子……すまなかった……俺は、俺は取り返しのつかないことを……」
静子は元夫の顔を見なかった。
彼女の線は、ただ集治療のベッドので、静かに眠りについた娘の顔だけに注がれていた。
「度と、のに現れないで」
く、しかし鉛のようにい言が、健の背に突き刺さった。
連されていくの音がざかり、病院の玄関がくい音が響いた。
そのの午、の林業組では緊急の理事会が招集され、健の専務理事解任が全会致で決定された。エミリーが主導していたバイオマス事業も、計画の透さとなスキャンダルをく見た県とにより、即凍結の処分がされた。
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閉鎖なが誇っていた「名」の権威は、自らの傲と実によって、崩のように音をてて崩壊していった。
事件からが過ぎた朝、田の並みは久しぶりのに恵まれ、積もったが陽を浴びてに輝いていた。
は般病棟の個へと移っていた。点滴の管もされ、ベッドので絵本をくことができるまでに回復していた。
病のドアが控えめにノックされ、輪の軋む音とともに、仙警察署の捜査両からりった警察官が姿を現した。その隣には、型の布製キャリーに収められた、懐かしい毛並みがあった。
「ハチ!」
がベッドのでを乗りし、声をげた。
キャリーの扉がかれると、ハチは力い取りでびし、直線にのベッドへと駆け寄った。
「ハチ……! ハチ……!」
はを乗りし、田犬の太い首周りの毛に顔を埋めた。ハチは荒い息を吐きながら、温かい舌での頬や肌を何度も、何度も丁寧に舐め回した。あの葬儀会で見せた狂気配のような唸り声は嘘のように消えり、喉の奥から「クゥーン、クゥーン」と甘えるような声を漏らし続けている。
同した警察官が、脱して静子にくをげた。
「お母さん、この犬の処遇についてですが……館健容疑者の親族側から、飼育の権利をすべて実母であるあなたへ譲渡する旨の誓約が提されました。
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あの会で暴れた際、部の親族が処分を求めて騒ぎてましたが、現の状況とちゃんの救における功績を鑑み、警察からも正式に『命救助に寄与した使役犬』としての保護措置を認めました」
「ありがとうございます……本当に、ありがとうございます」
静子はハチの背にそっとをねた。
指先に伝わってくる、分い筋肉と力い体温。
あの吹の夜、倒れたのに自らの体を覆い被せ、自らの体温を分け与えて凍を防いだのはこの犬だった。そして、棺のに閉じ込められた娘のわずかな息吹を嗅ぎ分け、酷な常識に支配されていたたちの目を覚まさせたのも、この犬だった。
「ハチ、ありがとうね……本当によく、を守ってくれたね」
静子が語りかけると、ハチは静かに顔をげ、その賢な琥珀の瞳で静子の目をじっと見つめ返した。その差しは、言葉を超えた絆で結ばれた族のそれだった。
病の窓からは、に輝く鳥の雄な稜線が見渡せた。
過酷なの厳しさので、命は確かに繋ぎ止められたのだ。
季節は巡り、。
仙の里にもようやく遅いが訪れ、沢沿いの解けが音をててせせらぎ、には福寿とフキノトウが黄い顔を覗かせていた。
館を巡る刑事裁判は迅速にんでいた。