"炎天下に追い出された新人と、5年ぶりに戻った男" 第14話
かつて糊の効いたストライプシャツを着て、級を乗り回し、部を顎で使っていた面はどこにもない。 億千万円の横領は、自宅と全財産を差し押さえられてもなお億円以の返済義務が残り、妻には婚され、義弟の資材会社は倒産。刑事裁判では執猶予付きの罪判決を受け、科者となった彼を雇ってくれる所は、この千円の炎の除作業しかなかった。
「おい、そこのオッサン! サボってんじゃねえぞ!」 代半の若い現リーダーが、軽トラックの荷台から声をばした。
「まだ半分も終わってねえだろ! 全部終わるまで休憩なんかねえからな! しっかり社精神見せてむしりしろよw」
「……っ!」 黒岩の臓が、激しくねがった。
全部終わるまで戻ってくるな。 社精神を見せてむしりしろ。
それは、かつて自分がの効いた涼しいオフィスから、歳の入社員に向かって吐き捨てた、あの呪いの言葉そのものだった。
「あ……ああ……」 黒岩のから、錆びついた刈り鎌が滑り落ちた。 焼けたアスファルトのに膝をつく。照り返しがから顔を炙り、筒ののぬるいはとっくに尽きていた。
(俺は……部だったんだぞ……。正気の、総務部だった男だぞ……!)
ので叫んでも、喉からは掠れた嗚咽しか漏れなかった。
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通り過ぎる型トラックの排気ガスと砂埃が、黒岩の全を容赦なく汚していく。 誰も彼の名を呼ばない。 誰も彼にたいを差し伸べない。
くに見える層ビル群のガラス窓が、かつて彼が君臨し、そして自らの傲によって永に追放された「国」のを、酷に反射していた。
同じの午、正気本社ビル。
正の周りの植え込みには、鮮やかなサルビアとマリーゴールドが美しく咲き誇っていた。 作業をしていたのは、お揃いの青いポロシャツを着た、所のシルバー材センターから派遣された初老の男女たちだった。
「潮見さん、いつもたいお茶をありがとうねえ」 麦わら子を被った作業員の老が、渡されたお茶を受け取って懐っこい笑顔を浮かべた。
「いいえ、こちらこそいつも丁寧にお入れしていただいて、本当にありがとうございます!」 笑顔で応対するのは、胸元にしい名札をつけただった。
【総務部主任 潮見 】
こので、総務部の業務環境は劇に改善されていた。 黒岩が私欲のために打ち切っていた植栽管理は、の発案により、域貢献の環として元のシルバー材センターへと正式に業務委託された。 入社員への雑用押し付けや理尽なむしりは全廃され、業務マニュアルの備とローテーション制度が確したことで、フロアには活気と笑顔が戻っていた。
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オフィスに戻ると、課に昇した堀田が笑顔で招きをした。 「潮見主任、来期の入社員研修のカリキュラム案、役員会で満致で決されたよ! 『現の痛みが分かるリーダーの育成』……素らしい提案だったと、滝川専務も絶賛だった」
「本当ですか!? よかったです……松井先輩と緒に練りげた甲斐がありました!」 隣の席の松井と顔を見わせ、ハイタッチを交わす。 かつて恐怖と沈黙に支配されていた総務部は、今や社内で最も通しの良い、誰もが異を希望する気部署へとまれ変わっていた。
は自席の引きしをけ、切に保管してあったつの麦わら子を見つめた。 つは、あの滝川から借りた、しほつれた古い子。 そしてもうつは、先週末、が自分で選んで購入した、真しい品の麦わら子だった。
「……よし」 はつの子を抱え、最階へと向かうエレベーターに乗り込んだ。
のお彼岸。 都郊の霊園には、澄み切った空の、よいが吹き抜けていた。
黒御の墓のに、のが並んでっていた。 喪姿の正浩郎と、潮見。
墓には『潮見・正之墓』と、つの名が刻まれていた。 が丁寧に雑を抜き、墓に柄杓で清らかなをかける。正が向けた輪の百のりが、線の煙に乗って真っ直ぐに青空へとちっていった。