"炎天下に追い出された新人と、5年ぶりに戻った男" 第11話
「……承、いたしました」 は力なく項垂れ、幽霊のような取りで会議をていった。
残された役員たちに対し、正は元の資料を叩きつけて告げた。 「全員、持ちに戻れ。そして社内の全部署に対し、業務委託の見直しと全配慮体制の緊急総点検を命じる。……以内に全社通をせ!」
「は、はい!!」 役員たちが崩を打って部をびしていく。 嵐がったの会議には、正、滝川、堀田、そして壁際に佇むのだけが残された。
同じ頃、階の総務フロアでは、すでに激震がっていた。
パトカーのサイレンの音がざかり、役員フロアからりてきた事部が、真っ青な顔でフロア央にった。 「総務部員、全員を止めてそのに起しなさい」
カタカタと鳴っていたキーボードの音が、瞬で絶滅した。 主任の佐伯が、嫌な汗を流しながらちがる。 「じ、事部……黒岩部は、どちらへ……?」
事部はたい線で佐伯を射抜いた。 「黒岩氏は、業務横領の現犯で警察に連された。本付で懲戒解雇だ」
ヒッ、とい鳴があちこちでがった。 「そ、そんな……! じゃあ、しい部は……?」
「任の総務担当役員は、専務執役員に着任された滝川武氏だ。……そして佐伯主任」 事部は胸ポケットから枚の辞令を取りした。 「君に対しても、黒岩氏の横領隠蔽への加担、ならびに部へのパワーハラスメント教唆の疑いで、本付で主任職を解任する。
広告
から、田の資材管理センターへの向を命じる」
「あ、田……!? そんな、私には京に買ったばかりのマンションが……!」 「があるなら、今すぐ退職届をしなさい。懲戒委員会への席を拒否するなら、共犯として刑事告発の続きも辞さないと滝川専務からのご指示だ」
佐伯の膝が音をてて崩れ落ちた。 いつもを嘲笑い、黒岩の虎の威を借る狐として威張り散らしていた男のれな末だった。
その、フロアの奥から、経理担当の松井が涙をボロボロとこぼしながらりてきた。 「事部! 私……私、全部お話しします! 黒岩部に脅されて、偽造伝票の処理を伝わされていました! 潮見さんが指摘してくれた、怖くて止められなかったんです……! どんな処分でも受けますから、警察に本当のことを言わせてください!」
松井の告を皮切りに、これまで黒岩の恐怖政治に怯えて沈黙していた社員たちが、堰を切ったようにをき始めた。 「私も、備品の架空請求を見過ごしていました……!」 「のむしり、止めるべきだったのに……本当にすみませんでした……!」
フロア全体が、悔と自責の涙に包まれていく。 その景を、エレベーターをりてきた堀田課が、静かに見つめていた。
「皆さん、泣くのはです」 堀田はタオルで汗を拭い、力い声で呼びかけた。
広告
「滝川専務から伝言です。『過の過ちはすべて吐きせ。隠蔽に加担しなかった者は、これからの働きで会社に返せばいい』と。……さあ、総務の膿をし切るぞ! 全員、伝票の洗いしにかかれ!」
「はい!!」
沈鬱だったフロアに、ぶりに「自浄」の気が満ちていった。 腐り落ちた巨が倒れ、しい芽が息吹き始めた瞬だった。
そのの夜。 役員フロアの最奥にある社のかりだけが、消えずに残っていた。
な革張りのソファ。テーブルのには、つの湯呑みが置かれていたが、注がれた緑茶はとうにめ切っていた。 向かいって座るのは、正浩郎と滝川武。
正は煙にをつけようとしたが、指先が微かに震え、マッチの軸を度折った。 本目でようやく煙をちらせると、く煙を吸い込み、そのまま井を見げた。
「……わしは、何も見えていなかったな」
社の絞りすような掠れ声に、滝川は何も答えず、ただ静かにを傾けた。
「会社を世界企業にする、欧州のを成功させる……そればかりに目を奪われ、元の本社がどれほど沼に沈んでいたのか、まるで気づいていなかった。……滝川。、おが資材部の正を訴えてきた、わしはおの言葉を信じず、の甘言に乗って、おをへ追いやった」
正は皿に煙を押し付けると、ちがり、滝川の目ので直した。