"父の葬儀を捨てた夫へ、亡き父が遺した最後の証拠" 第7話
は元の便箋に、今の指針を淀みなくき殴った。
健太郎の貞為に対する証拠保全と、責配偶者としての慰謝料請求(百万円)。
リサに対する共同法為に基づく損害賠償請求(百万円)。
自宅の鍵のシリンダー交換と、健太郎に対するち入り禁止通告。
正雄の遺産に関する即相続登記と、融関への座凍結・管理続き。
「美央ちゃん、今、健太郎君がに帰ってきたら、どうするつもりだね」
の問いに、美央は背筋を伸ばし、迷いのない声で答えた。
「父の葬儀を放りしてどこへっていたのか、まず事実を問いただします。そして、父の遺産には指本触れさせないこと、婚姻関係を本限りで破綻させることを通告します」
は元に微かな笑みを浮かべ、力く頷いた。
「よし。修羅になるだろうが、恐れることはない。私の事務所の事務員名を、おの自宅のくに待させておく。何かあれば、即座に警察と私を呼びなさい。正雄さんの魂が、おの背を押しているよ」
事務所をると、の空はどこまでも青く澄み渡っていた。
美央はタクシーを拾い、自宅へと引き返した。
には、父が遺してくれた真実の束。
父を裏切り、妻を欺き、その骸すら踏みにじった男との、最の決戦の幕ががろうとしていた。
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午半、美央はタクシーをり、自宅の扉をくぐった。
の陽が壁の階建てのをるく照らしていたが、のは相変わらず者の特の張り詰めた気に満ちていた。美央は靴を脱ぐと、リビングのサイドボードにある父の遺に線を本て、く息を吐きした。
法律事務所でえた類の束は、ダイニングテーブルの引きしの奥に隠すことなく、クリアファイルに入れて元に置いた。
午、ガレージにが入る鈍いエンジン音が響いた。
数分、玄関の鍵がき、靴を脱ぎ散らかす音が廊に届く。リビングの引き戸をけて入ってきた健太郎は、昨の黒い喪の着を肩に引っかけ、ネクタイを緩めていた。無精髭がわずかに伸び、目のには隈が浮かんでいたが、その元にはどこか「きな仕事をつ片付けてきた」男特の弛緩した気配が漂っていた。
「……美央、起きてたのか」
健太郎はダイニングテーブルの子を乱暴に引き、どっかりと腰をろした。
「昨は本当にすまなかったな。会社のサーバーが吹っんで取引先への納品データが全部消えかけてさ。俺が徹夜で復旧作業に入って、今さっきようやく仮復旧が終わったんだよ」
息を吐くように、淀みなくスラスラと紡ぎされる嘘。
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美央は湯呑みのお茶をに運ぶこともなく、静かに夫の顔を見つめ返した。その瞳があまりにもたく澄んでいることに気圧されたのか、健太郎は居悪そうに首のろを掻いた。
「おい、どうしたんだよ。るのも無理はないけどさ、会社が潰れたら俺たちの活も終わりなんだぞ。お義父さんの葬儀にられなかったのは俺だって悔しいよ。今、これから改めてをわせさせてくれ」
健太郎がちがり、サイドボードの遺へ歩み寄ろうとした。
「触らないで」
く、質な美央の声がリビングの空気を切り裂いた。
健太郎のがピタリと止まる。
「……美央?」
「その汚れたで、お父さんの遺にもお骨にも触らないでちょうだい」
美央はちがることなく、元のクリアファイルから枚の写真を取りし、テーブルの央に表を向けて滑らせた。
昨の分。世田区のデザイナーズマンションのエントランスで、喪のネクタイをしながらオートロックを解錠している健太郎の姿が、鮮なフルカラーで写しされていた。
「これ……何?」
健太郎の顔から、目に見えて血の気が引いていく。唇が刻みに痙攣し、伸ばしかけたが宙で止まった。
「リサさんのマンション、サーバーなんてあったかしら。彼女の部で徹夜の復旧作業をしていたの?」
「な……な、何言って……これ、誰が撮ったんだよ! 盗撮じゃないか!」
健太郎は取り乱して写真を引ったくろうとしたが、美央はそのをピシャリと扇子で払いのけた。