"父の葬儀を捨てた夫へ、亡き父が遺した最後の証拠" 第4話
玄関をる、もう度だけ健太郎のスマートフォンへ線を向けたが、やはり通は何つ届いていなかった。
美央は迷うことなく玄関の鍵を閉め、夜の気に包まれたガレージへと向かった。
午分、浄照寺のなのにを滑り込ませた。
灯がつだけ灯る境内の駐にはにはなく、い杉が夜にざわめいていた。昼には幾度となく訪れた馴染みい寺院だったが、夜の漆黒のに包まれた本堂は、異界の入りのような厳粛さを漂わせていた。
寺務所の通用のインターホンを押すと、先ほど話にた初老の寺侍が、作務のに羽織を着た姿で静かに扉をけてくれた。
「美央様ですね。夜分にご労をおかけいたしました」
寺務所の応接に通され、運転免許証を提示して本確認を済ませた。寺侍は机の引きしから枚の類を取りした。父の直による預りの領収証と、美央へ向けた覚だった。
『墓所の第区画、佐伯墓標の脇にある供養碑の背面を確認すること。そこにある鍵を用いて、寺務所保管庫の第12番ロッカーをけること』
几帳面な父の文字。数字のがわずかににねる独特の癖まで、の父そのものだった。
「ご案内いたします」
寺侍が型の懐灯を持ち、美央を先導して本堂の裏に広がる霊園へと歩きした。
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玉砂利を踏みしめるジャリッ、ジャリッという音だけが、静寂の境内に響き渡る。夜に濡れた無数の墓が青いを浴びて鈍くっていた。恐怖がなかったと言えば嘘になる。しかし、寺侍の確かな取りと、父が敷いてくれた本のレールが、美央のをへへとませた。
母の墓のにち、美央は静かにをわせた。
「お母さん、来たよ……」
墓の隣には、母がくなった翌に父が建てた、さな崗岩の記碑があった。母が好きだった桜のレリーフが彫られている。美央は記碑の裏側に回り込み、懐灯のを当てた。
台座の継ぎ目の奥、目につかない窪みに、さな属製のプレートがビスで固定されていた。そこには、スマートフォンに届いた番号と同じ『740219』の文字が刻印されていた。
寺侍が窪みの奥から、防加が施された透な脂製ケースを取りし、美央のの平へと載せてくれた。
ケースをけると、には本のさな真鍮製の鍵と、つ折りにされた片が入っていた。
片をくと、鉛でこう記されていた。
『寺務所ロッカー12番。 にあるものは、弁護士にも部の控えを預けてある。 美央、真実を見ることを恐れるな。 佐伯正雄』
寺務所へ戻り、奥の保管に並ぶスチール製ロッカーの「12番」のにった。
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美央は震えるで真鍮の鍵を差し込み、へ回した。
カチャリ、とい属音が響き、扉がにいた。
ロッカーのに収められていたのは、父が類を理する際に用していた、茶い布張りの文庫箱だった。箱のには、い封筒が通、置かれていた。
表きには、父の力い跡で、ただ言。
『美央へ』
美央はその封筒を胸に抱き寄せ、寺侍に向かってく、々とをげた。
「……ありがとうございました」
「お父様は、本当にあなた様のことを案じておられました。どうぞ、お気をつけてお持ち帰りください」
受領確認に署名を済ませ、文庫箱を抱えてに戻った、の空の稜線が、かすかに群青からがかった茜へと移ろい始めていた。
助席に父の箱を置き、美央はシートベルトを締めた。
午の解な呼びしの背にあったのは、オカルトでも怪奇現象でもなく、期を悟った父が娘のために張り巡らせた、命がけの防護壁だった。
え切った内にヒーターの温が吹きす、美央はアクセルを踏み込み、夜けのへとをらせた。すべての答えが、あの箱ので自分を待っていた。
自宅のリビングに戻ったのは、午分だった。
美央はコートを脱ぐことも忘れ、ダイニングテーブルの央に父の遺を置き、そのに茶い布張りの文庫箱を据えた。
元には、寺務所から持ち帰った『美央へ』とかれたい封筒がある。