"父の葬儀を捨てた夫へ、亡き父が遺した最後の証拠" 第3話
識が浅い微みへと落ちかけた、そのだった。
ピピッ、ピピッ。
静まり返ったリビングに、スマートフォンのいバイブレーションが鳴り響いた。
美央はね起きるようにしてを起こした。サイドテーブルのの計を見ると、針は午分を指していた。
こんなに体誰なのか。健太郎が今頃になって言い訳のメッセージを送ってきたのか。胸の奥にたいりを宿しながら画面をに取った美央は、通ポップアップに表示された送信元の名に目を疑った。
『お父さん』
全の血液が瞬で逆流し、息が喉の奥で詰まった。
父のスマートフォンは、入院から美央が預かり、病院の引き揚げ荷物と緒に自の引きしのに切に保管してある。源は落としたはずだった。
何かの悪質ないたずらか。あるいは、回線のエラーなのか。
震える指先でロックを解除し、メッセージアプリをいた。
画面に並んでいたのは、見慣れた父の簡潔な致そのものの文章だった。
『美央。父さんだ。 誰にも言わず、今すぐ母さんの墓に来てくれ。 母さんの墓の裏を見ろ。 確認番号:740219 寺の夜受付でこの番号と父さんの名を伝えろ。 これは、おが自分のを自分で決めるために必なものだ』
美央はスマートフォンの画面を見つめたまま、数分、瞬きすら忘れてち尽くした。
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悪戯にしては、内容があまりにも具体すぎた。「母さんの墓の裏」。に界した母・文子の墓所は、ここからで分ほどの丘陵にある臨済宗の古刹・浄照寺の霊園にある。、父は体調が良いには必ず「母さんのところへくぞ」と美央を誘い、に墓参りをしていた。その言い回しや墓所の構造をるなど、ごく限られた親族しかいないはずだった。
美央はちがり、寝のチェストの引きしをけた。
い巾着袋のから、父が使っていた角の擦れたスマートフォンを取りした。サイドボタンを押しする。画面が点灯し、起するが、送信履歴の画面には今夜美央宛てに発信されたログなどどこにもしなかった。
「父さんの端末から送られたんじゃない……」
では、このメッセージはどこから、誰のによって送信されたのか。
気さと恐怖が背筋をいがった。しかし、文末に添えられた『これは、おが自分のを自分で決めるために必なものだ』という節が、美央の胸をく打った。
父が病で美央のを握りながら言っていた言葉と、寸分違わぬ響きを持っていたからだ。
美央は迷った末、浄照寺の夜寺務所へ話をかけることにした。夜を回ったに寺へ話をかけるなど常識れもだしい。
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だが、で夜の墓へをらせるに、何らかの事実を確認する必があった。
コールが回鳴った、く落ち着いた男性の声が受話器の向こうから聞こえてきた。
『はい、浄照寺夜警備でございます』
「夜分遅くに変申し訳ありません。檀の佐伯正雄の娘の、美央と申します。……父から、確認番号を預かっておりまして……」
美央が恐る恐る告げると、相の僧侶らしき男性は、息をつえてから静かに尋ねてきた。
『……桁の確認番号をお持ちでしょうか』
「はい。740219、です」
話の向こうで、バインダーの用をめくるパサリという音が響いた。
『確認いたしました。佐伯美央様ですね。お父様の正雄様より、ヶほどより特別なご依頼を承っております。「該当のメッセージが娘に届いたであれば、夜であっても寺務所をけ、指定の保管物を引き渡すように」と、正式な委託を頂戴しております』
美央の喉が渇ききっていた。
「父が……事に頼んでいたのですか?」
『様でございます。お寺のをけてお待ちしております。夜ですので、どうぞお気をつけてお越しください』
通話が切れた、美央はしばらく受話器を握りしめたままけなかった。
父は、自分がんだのこと、そしてこのの夜に美央がで途方に暮れていることを見越して、あらかじめ精密な仕掛けを遺していたのだ。
美央は喪から濃紺のタートルネックと黒のパンツに着替え、のキーと分証、そしてスマートフォンをコートのポケットにねじ込んだ。