"夫に捨てられた盲目の妻が隠していた秘密" 第7話
受話器の向こうから、い、氷のような吐息が聞こえた。 そして――父親の代わりに、スピーカーから静かに響いてきたのは、聞き慣れたはずの、しかしこれまで度も聞いたことのないほど徹で、透き通った女の声だった。
『……拓也さん』
「あ……? 咲……!? お、親父ののにいるのか!?」
『ええ。……あなたが今、自分の元にあると誇らしげに語っているその茶封筒。を、自分の目で確かめてみたらどうかしら?』
「は……? だと……?」
拓也は眉をひそめ、ビジネスバッグから引きずりした茶封筒の封蝋を、力任せにバリバリと破り捨てた。 から滑りてきたのは――権利証の分いなどではなかった。
枚のい診断と、数枚の写真、そしてきの便箋。
その診断の番に印字されていた文字を読んだ瞬、拓也の球が、今度こそ完全に裏返った。
【診断名:神経圧迫解除に伴う力完全回復】 【矯正力:1.2 1.0】 【診断:・】
「に……にねん、まえ……!? 力……いってんぜろ……!?」
拓也の喉から、ヒュウッという空気の漏れる音が鳴り響いた――。
「な……なんだよ、これ…………!? 力が、回復……!?」
拓也の膝がガクガクと激しく震え、にした診断がパラパラと音をててへ滑り落ちた。 続けて、封筒からこぼれ落ちた数枚のカラー写真を拾いげる。
そこには、拓也とリカが級フレンチレストランで抱きっている写真、ホテルのベッドルームでシャンパングラスを交わしている写真、そして――自宅リビングで、目が見えないはずの咲のすぐ真横で、が品な笑みを浮かべてキスをしている写真が、完璧なピントと構図で鮮に写しされていた。
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プロの探偵が望レンズで隠し撮りしたような写真ではない。 すべて、部のにいたの目線のさから、極めて至距で撮されたアングルだった。
そして、最に残された枚の便箋。 そこには、咲の流麗で凛とした跡で、たっただけ記されていた。
『あなたの浅ましい計画は、すべて私のこの両目で、特等席から見届けていましたよ』
「う、わあああああああっ!!」
拓也はまるで灼の鉄板に触れたかのように便箋を放り投げ、を抱えてのたうち回った。
『……どうしたの、拓也さん。声が震えているけれど』 スマートフォンのスピーカーから、咲の氷のようにたく、美しい声が部に反響した。
「お、お……! 目が見えてたのか!? 嘘だろ!? あの、トラックに撥ねられて失したはずだろ!!」
『ええ。事故の直は、本当に真っ暗だったわ。でもね、半には奇跡にが戻ったの。嬉しくて、あなたにすぐにらせようと病のベッドで待っていたわ。……でも、ドアのから聞こえてきたのは、あなたがリカとキスをしながら、「くあの目暗女を始末して、億円を奪おう」と嘲笑いう声だった』
咲の声のトーンが、さらに段とく、徹なものへと研ぎ澄まされていく。
『あの瞬、私は決めたのよ。……この愚かな男が、私の目のでねるすべての罪を、この目で秒たりとも逃さずに記録し、の絶頂から獄の底へ突き落としてやるとね』
「じゃ、じゃあ……あの、おが杖をついて怯えていたのも……俺が飯にゴミを混ぜたのをってたのも……全部芝居だったっていうのかよ!?」
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『ゴミ? ふふっ、あなたがドヤ顔で運んできた腐った料理なんて、あなたが呂に入っている隙に全部ディスポーザーで砕して、しいレトルトをべていたわよ。あなたが私ので堂々と倫相と話していたのも、会社の裏を横領する契約にハンコを押していたのも、パソコンで隠し座のパスワードを入力していたのも……すべて、この目で見て、録画していたわ』
拓也の全から、文字通りすべての血液が抜け落ちていくような覚が襲った。 盲目の妻を完全に支配していると錯覚し、ので切の警戒を怠っていなかった。パスワードも、との々しいLINEの画面も、すべて「見えない妻」の目ので堂々と晒していたのだ。
実の権利証も、拓也が庫に隠した所を咲がすべて把握しており、拓也が酔して眠りこけている隙に、本物の権利証を庫から回収し、この診断の束とすり替えていたのだ。