"夫に捨てられた盲目の妻が隠していた秘密" 第5話
夜。都内の等にそびえつ階建ての級タワーマンション。 最階のペントハウスのに辿り着いた拓也は、息を切らしながら鍵を鍵穴にねじ込み、乱暴にドアを押しけた。
「リカ! 俺だ! 緊急事態だ、く荷物をまとめろ!」
理の玄関にのまま踏み込み、リビングへと駆け込む。 部のには、濃で甘ったるいの匂いと、級シャンパンのアルコール臭が充満していた。接照に照らされた広いリビング、イタリア製のい本革ソファ。
そこには、ネグリジェ姿のリカが優雅にを組み、クリスタルグラスを傾けていた。 だが――彼女はではなかった。
「……え?」
拓也の喉から、の抜けた声が漏れた。 リカの隣、ソファの央にふんぞり返り、彼女の肩を抱き寄せていたのは――拓也が吉種商事の営業部で最も見し、頃からパシリとして顎で使っていた直属の輩社員、健太(けんた・歳)だった。
のにあるガラステーブルのには、キャビアとシャンパンのボトル、そして――すでにパンパンに膨らんだ型のスーツケースがつ、儀よく並べられていた。
「け、健太……? お、なんでここに……?」
拓也の混乱をよそに、健太はニヤニヤと品な笑いを浮かべ、にしたグラスを掲げてみせた。
「やあ、拓也課。お疲れ様でした〜。
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ったよりく帰ってきましたね? 奥さんを奥に捨てるドライブ、楽しかったですか?」
「な、何を言って……おいリカ! これどういうことだ! なんで健太がここにいるんだよ!」
拓也が詰め寄ろうとした瞬、胸をよぎった烈な胸騒ぎに背を押され、壁際の飾り棚に隠されていた型耐庫へびついた。 扉は――すでに無惨にけ放たれていた。
は空っぽだった。 咲の実の権利も、会社からしずつ抜き取って現化していた数千万円の札束も、パスポートも、何つ残されていなかった。
「……が、ない。俺のが……ない!? おいリカ! はどこへやったんだよ!!」
振り返り、狂乱状態で叫ぶ拓也に対し、リカはソファからちがると、腹を抱えて甲い声で爆笑し始めた。
「アハハハハハッ! 『俺の』だって! ウケるんだけど! ねえ健太、聞いた? この、まだ自分が騙されてることに気づいてなかったみたいよ!」
「ぶはっ、最っすね! れすぎて涙ますよ課!」
リカはえ切った侮蔑の差しで、にへたり込む拓也を見ろした。 その声は、かつてベッドので拓也に甘えかかっていたあののものとは、完全に別のようにく、酷だった。
「当たりでしょうが、このハゲかけの勘違いオッサン。あんたみたいな加齢臭漂う無能男を、代のモデルの私が本気で好きになるわけないじゃない。
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あんたはただの【便利なATM】。目が見えない奥さんから遺産を毟り取らせるための、ただのピエロだったのよ」
「な……な……」
「健太と私はね、最初からグルだったの。あんたが会社から裏を横領するも、全部健太から筒抜け。あんたが奥さんを奥に捨てにってるに、この部の庫を綺麗さっぱり空にして、今夜の夜便ででスイスへびするはずだったのよ。……ごちそうさまでした、マヌケな拓也さん!」
「ふ、ふざけるなああああっ!」
逆した拓也が獣のような叫び声をげ、リカの首元へ掴みかかろうとびかかった。 だが、その体躯は、若く鍛えげられた健太の烈な蹴りによって、いとも簡単に吹きばされた。
ドガッ!!
理のに背を打し、拓也はカエルのような苦鳴をげて悶絶した。 のたうち回る拓也の顔面に、リカは履いていたハイヒールの爪先をぐりぐりと押し付けた。
「寄らないでよ、潔な犯罪者。……自分の妻が障害者になった途端に虐待してに捨てるようなクズ男、同じ空気を吸ってるだけで吐き気がするわ。そのままで、警察にでも捕まって刑務所で腐りなさい!」
リカは唾を吐き捨てるように言い放つと、健太と共につの巨なスーツケースを引き、玄関へと歩きした。
「待て……! 置いていかないでくれ、リカ! 返せ! 俺のだぞぉぉっ!!」
いずりながらすがる拓也のを、リカはヒールの踵で容赦なく踏みにじった。