"私を捨てた元婚約者が、十数年後に知った本当の私" 第10話
その結果、あなたに経営の才覚も誠実さもないことを見抜き、娘の婿養子として迎えることを断固拒否された。会社の定款にも、代表権は直系の優秀なご子息にのみ継承させると、すでに厳格な改定がなされているわ」
「な……んだと……?」
「あなたが見ていた『社令嬢と結婚して次期社』という未来は、あなたののにしかなかった、ただのれな妄よ」
真子の徹な宣告が、吉の臓に最の撃として突き刺さった。
男は両でを抱え、獣のような呻き声を漏らしながらに突っ伏した。自分が誇り、自し、真子を見すための唯の武器だった「勝ち組の結婚」というが、音をてて瓦解していく。
しかし、この夜の悪は、まだ終わっていなかった。
「キャーッ! ダーリィィィン! やっと見つけたぁぁぁ!」
宴会の静寂を切り裂いたのは、を塞ぎたくなるような甲い黄い鳴だった。
防音扉が乱暴にけ放たれ、フロアをりに駆け込んできたのは、歳という齢を完全に無した、鮮やかなショッキングピンクのフリル付きワンピースを着た女だった。には釣りいなほど巨なリボンを乗せ、濃すぎるチークを施した顔で両をきく振っている。
磯神美だった。
「げ……美!?」 「うわ、本当にてきたよ……あのキャラ、まだやってるのかよ……」
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同級たちがドン引きしてずさりし、美の周りにぽっかりと空の円ができる。
美は周囲の軽蔑の線など完全に無し、にへたり込む吉の元へ直線に突した。
「ダーリン! 会いたかったよぉ! 最全然連絡くれないから、美、寂しくてんじゃうところだったんだから!」
美は吉の首元にびつき、の匂いを撒き散らしながら抱きついた。
「お、おい! せ! なんでおがここにいるんだよ!」
吉が狂乱状態で美を引き剥がそうとするが、美の腕はまるでタコののように首に絡みついてれない。
「だってぇ、同窓会があるってったから! 招待状が届かないから、昔の同級ののポストを見張って、届いた案内状をこっそり拝借してきたの! ダーリンに会うためなら、美、どんなことだってしちゃうんだから!」
「郵便物の窃盗までしたのかよ……」同級の男子が青ざめて呟いた。
エミナが憤に顔を歪め、美の髪を引っ掴まんばかりにして鳴りつけた。
「ちょっと! あなた誰よ! の夫に何ベタベタ触ってんのよ、この棒猫!」
美はエミナを目遣いで睨み返し、舌をしてせせら笑った。
「棒猫はおばさんの方でしょ? ダーリンと美はね、からずーっとしってるの! ねー、ダーリン、奥さんとく婚して美と緒になるって約束したよねぇ?」
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「な、何を言ってんだ! 嘘をつくな!」
「嘘じゃないもーん! ほら、証拠!」
美はバッグから、枚の母子帳と、スマートフォンの画面を突きつけた。
「美のお腹にいた赤ちゃん、もうこんなにきくなったんだよ? ダーリンの遺伝子を継いだ男の子! 養育費、先から振り込まれてないんだけどぉ! 結婚してくれないなら、今すぐ百万円払ってよ!」
「よ、養育費……!? 子どもだと……!?」
エミナの絶叫が、シャンデリアを揺るがす勢いで轟いた。
吉は顔面蒼になり、ガタガタと歯の根を鳴らして震えていた。に真子を裏切って美と関係を持ち、そのすぐに別れたはずの女と、面でズルズルと腐れ縁を続け、挙げ句の果てに隠し子まで作っていたのだ。
「ふざけないでよ……! なんなのよこの男! 潔! 嘘つき! 寄虫!」
エミナは持っていたクロコダイルのバーキンを力任せに吉の顔面に叩きつけた。具が額を直撃し、吉の額から筋の血が流れる。
「、弁護士から婚届と慰謝料千万円の請求を送りつけてやるわ! 会社も懲戒解雇よ! パパに言って、業界から永久に追放してやるから覚悟しなさい!」
エミナはドレスの裾を翻し、りの形相で宴会を嵐のようにっていった。
「エ、エミナ! 待ってくれ! 誤解だぁぁ!」
吉がいつくばって追いかけようとしたが、美がその両にしがみつき、怪力で引き倒した。
「かせないよぉ、ダーリン! これで邪魔者はいなくなったね! やっと美だけのものになるんだね!」