"私を捨てた元婚約者が、十数年後に知った本当の私" 第2話
「よお、真子じゃないか。久しぶりだな」
混みを掻き分け、吉はわざとらしい取りで真子の正面へと歩み寄ってきた。
「元気にしてたか? お、相変わらず『会』なんて呼ばれて、な格好してんな。おいエミナ、こいつが俺の昔のりいの真子だ」
隣の妻にそう告げると、吉は周囲の同級全員に聞こえよがしな声で、嘲弄を込めて言い放った。
「持ちの社令嬢と結婚した。俺だけ幸せになっちまって、ごめんなw」
広な宴会が、完全に静まり返った。
「やっぱり俺は勝ち組だよな。で、おは……今もで、ボロアパートでの当直でもやってるわけ? あの、俺の言う通り素直にしとけば、今頃社夫になれたかもしれないのになあ」
吉は元に顔をづけ、囁くように侮蔑の言葉をねてきた。かつて自らが踏みにじった相を再び公衆の面で見し、己の優越を満たすためだけに選ばれた、悪の塊のような言葉。
同級たちがりと気まずさに線を泳がせる、真子は微だにしなかった。そのは、さざ波つっていなかった。ただ、目のにつ男の救いようのない浅さを、徹な医師の目で観察していた。
真子はグラスをテーブルに置き、静かにをいた。
「本当に、そうう?」
その瞬、内の空気がピンと張り詰めた。
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勝ち誇った笑みを浮かべていた吉の眉が、わずかにピクリとねがった。
計の針を、今からほど――真子が代半だった頃へと巻き戻す。
当の真子は、医学部を卒業して学病院での初期研修医活に追われるだった。朝半に勤して受け持ち患者のカルテを巡し、採血や点滴の処置にり回り、夜は教授の回診やカンファレンスの準備に追われる。当直けの体を引きずりながら医学をくような、ともに極限の毎だった。
そんな過酷な常ので、学卒業直の同窓会で偶然再会したのが吉だった。
代はサッカー部に所属し、お調子者での達者なムードメーカーだった吉は、学をて堅の専商社に営業職として就職していた。
「真子、医者の勉って本当に変そうだな。でも、おなら絶対にいい医者になれるよ。昔から誰よりも責任がかったもんな」
激務に擦り減っていた真子のに、吉の屈託のない励ましは温かく染み込んだ。やがては交際を始め、真子の研修医修の目処がった歳の、吉からのプロポーズを受けて婚約した。
真子が暮らしをしていた都内の賃貸マンションに吉が転がり込む形で同棲が始まったが、違は同居始からわずか数週で、気な黒い染みのように広がり始めた。
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「真子、結婚式の招待客リストの確認、まだ終わってないのか? く式に提しなきゃいけないんだろ」
当直けでぶりに帰宅し、疲労困憊で玄関に倒れ込みそうになっている真子に対し、リビングのソファでゲームを握りしめた吉が、画面から目をさずに言い放った。
部のは散らかり放題だった。シンクには吉がべたカップ麺の容器やビールの空き缶が積みにされ、脱ぎ捨てられた洗濯物がに散乱している。
「吉……私、昨からずっと緊急術の助に入ってて、もしてないの。リストの叩き台は先週渡してあるんだから、あなたの側の親戚や友の確認くらい、あなたがやっておいてくれたっていいじゃない」
「はあ? 俺は今、回りで疲れてんだよ。結婚式の準備なんて女の仕事だろ? だいたい、医者医者って威張ってるけどさ、のこともろくにできないで何が嫁だよ。飯、まだできてないの?」
吉は平然とそう吐き捨てた。
結婚式の打ちわせ、装の試着、引き物の選定、招待状の宛名き。そのすべてを、激務のを縫って真子がで背負わされていた。吉は「任せるよ」と先では調子のいいことを言いながら、いざ真子が決定をすと「センスがない」「もっと派な演にしろ」とから理尽な難癖をつけるだけだった。
事の負担もすべて真子にのしかかった。