"妊娠八ヶ月の私を捨てた夫と義母に、静かな決断を下した日" 第4話
守るべきものは、何だ? この酷な族の嫌なのか? 世体なのか? それとも――私をしてくれたこの両親と、今、私のお腹ので力くいている、このしい命なのか。
翌朝、父の容態は奇跡に定し、集治療から般病棟の個へと移ることができた。
ベッドの脇で、私は父の枯れ枝のように痩せたを握っていた。 麻酔から完全に覚した父は、々しい力で私のを握り返し、酸素カニューレの奥から、途切れ途切れの声をした。
「……由……仕事は……体は、丈夫か……」
自分の胸が切り裂かれ、の淵から還したばかりだというのに、父の第声は私の体を配する言葉だった。
「丈夫……丈夫だから。お父さん、喋らないで、今は休んで」
「……正志君は……? 忙しいのか……」
喉の奥に、焼けた鉄を押し込まれたような激痛がった。 「仕事が忙しくて来られないの」と嘘を吐くことすらできなかった。父は私の張った表を見ただけで、すべてを察したように、それ以何も尋ねず、ただ静かに目を閉じて私のを握り続けた。
午になり、父が眠りについたのを見届けて、私は母に連れられて病院の堂へと向かった。 テーブルに向かいって座ると、母は温かいほうじ茶の湯呑みを私のに押しし、じっと私の顔を見つめた。
「由。目が真っ赤よ。昨夜からもしていないでしょう」
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「……ううん、丈夫」
「嘘をつかなくていいの。正志さんから、また酷いことを言われたのね?」
母の優しい差しに触れた瞬、張り詰めていたの堤防が決壊しかけた。私は俯き、テーブルのに涙をポタポタとこぼしながら、義母から届いたLINEの画面を母に見せた。
分の料理の。 「妊娠は病気じゃない」という罵倒。 「実はだ」と言い放った夫の言葉。
母は震えるで画面をスクロールしていった。画面を見つめる母の横顔が、りとしみで次第に蒼になっていく。すべてを読み終えた母は、スマートフォンを静かにテーブルに伏せ、私の震えるを両で包み込んだ。
「由。あなたに、つだけ聞かせて」
「……何?」
「あなたは、誰のためにきているの?」
母の静かな、けれど魂の奥に届くような問いかけに、私は息を呑んだ。
「正志さんのため? あちらのお義母さんのため? それとも、世体のため?」
「……私、いいお嫁さんになりたかったの。正志に認めてもらいたくて、お義母さんに嫌われないように、ずっとして……」
「馬鹿ね」
母は私の頬にを添え、親指で涙を拭ってくれた。
「自分を殺して、自分の尊厳を踏みにじらせてまでに入れる『いいお嫁さん』の座に、体何のがあるの? あなたがボロボロになって倒れたら、お腹の赤ちゃんはどうなるの? 自己犠牲はね、誰も幸せにしないのよ」
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母の言葉が、え切った私のに、いを灯していく。
「お母さんはね、あなたに幸せになってほしいの。笑っていてほしいの。あんな酷なたちの贄になるために、お父さんとお母さんは、あなたを切に育ててきたんじゃない!」
母の瞳から、粒の涙が零れ落ちた。
「逃げなさい、由。自分の命と、その子の命を守るために、あのから逃げしなさい」
逃げる。 その言葉が、私のので、まれて初めて「正当な防」として輪郭を結んだ。 逃げることは、負けではない。 この子と私を、暴力から守るための戦いなのだ。
その、私のスマートフォンが、またしても激しく振した。 画面に表示されたのは、正志でも義母でもない、いがけない物からの着信だった。
【義兄嫁・智子】
結婚式のに度挨拶を交わしたきりの、男の嫁からの話だった。
「……もしもし、智子さんですか?」
病院の非常階段の踊りへ移し、通話ボタンを押すと、受話器の向こうから激しく息をえるような気配が伝わってきた。
『由さん!? よかった、繋がった……! 正志君からあなたの番号を聞きしたの。いきなり話してごめんなさいね』
智子さんの声は、ひどく張り詰め、切迫していた。
『単刀直入に聞くわ。あなた、お義母さんから正の連絡、来てるでしょう?』
「……はい。分の料理のリストと、に必ず来いという指示が届いています」
受話器の向こうで、智子さんがく、いため息を吐きした。