"離婚した5日後、私が92億円の都心ビルを相続したと知った夫" 第3話
12か払わなかった社
翌、私は伊藤先と座のビルを訪れた。正面玄関のガラスにはの空が映り、昼休みを終えた会社員たちが次々と回転扉を抜けていく。父が残したのは92億円という数字だけではない。この建物で働くたちの常まで、今は私が守る側にっていた。
11階の管理事務所には、父が過3分の入記録と連絡記録を理していた。佐藤デジタルの未払いは12か。話7回、メール11通、内容証2通。それでも浩司は《資繰り表を提する》と返事をしたきり、1枚も送っていなかった。
窓越しに5階の事務を見ろすと、若い社員が資料を抱えて忙しくき来していた。創業からっている顔もある。浩司の責任を追及すれば、何もらない社員までになるだろう。そのさに胸が詰まったが、だからといって12かの未払いを見過ごせば、父が守ってきたの入居者へ負担が移る。黙って耐えることは、誰かを守ることと同じではなかった。
「入が止まったあとも、佐藤社は最階の会議を頻繁に使っています」
管理責任者が差しした利用記録には、浩司と美穂の名が7回並んでいた。同席者は産仲介会社を経営する修平。目欄には《物件取得協議》とかれている。
父は体調を崩す、毎1度は各階を歩き、清掃員や受付係にも自分から声をかけていたという。
広告
管理責任者は「額より、ここで働くの顔を覚えなさいが癖でした」と教えてくれた。私は父のやり方をすべてっているわけではない。それでも、いのを盾にする浩司のやり方だけは、父が最も嫌ったものだと分かった。
浩司は賃料を払わないまま、自分が借りているビルを買い取ろうとしていた。父には複数回、買い取り提案が届いていたが、提示された資の裏づけも、未払いをどう解消するかという説もなかった。
「父は、なぜすぐ契約を解除しなかったのでしょう」
「社員40を突然追いしたくない、とおっしゃっていました。ただし、娘さんの名義を使う話がたは、すぐ伊藤先へらせるよう指示されていました」
管理責任者の言葉に、私は顔をげた。父はくなるから、浩司が会社だけでなく私まで資繰りに利用する能性を疑っていたのだ。
私は請求と連絡記録を確認し、所者として最初の指示へ署名した。今の猶予や売却交渉はすべて面でい、未払いの解消案が提されるまで約束には応じない。面談には所者本が席するが、氏名は当まで伏せることも加えた。
そのの午、浩司の会社へ緊急面談の通が届いた。
佐藤デジタルの社では、浩司が通を机へ放り、美穂とのでを鳴らした。
「の所者はんだんだ。相続した族は、92億円のビルを扱ったこともない素だろう。社員40をに迷わせるのかと言えば、女ならすぐ折れる」
「それでも駄目なら?」と美穂が尋ねた。
「買い取りに滞納分を払うと言えばいい。相はきな資産を相続して、税のことでがいっぱいのはずだ。し助けてやる顔をすれば、向こうから判を押す」
浩司は私に婚届を渡したときと同じように、相がっている瞬なら自分の望む署名を取れると信じていた。
机の通には、《所者本が席予定》とだけかれている。
その物が、5に葬儀で切り捨てた妻だとは、まだ像もしていなかった。