"離婚した5日後、私が92億円の都心ビルを相続したと知った夫" 第2話
の鍵がいたもの
翌朝96分、浩司から《提した。今に荷物を運びしてくれ》というメッセージが届いた。
私はい文面を2度読み、役所で婚届受理証を受け取ってから伊藤法律事務所へ向かった。窓のにはのいが差し、応接の机には昨夜の属箱が置かれていた。
の鍵を差し込むと、乾いた音がして蓋がいた。には公正証遺言、登記事項証、資産評価、それに父の跡で《由美へ》とかれたい封筒が収められている。
「田郎様は、座5丁目にある11階建ての商業ビルを所していました」
伊藤先が示した評価の数字を見ても、私はすぐにはを理解できなかった。
92億円。
現の残ではなく、と建物をわせた現の評価額だという。父は古い戸建てで暮らし、スーパーでは値引きされた豆腐を選ぶだった。6か同じ根ので介護した私さえ、父が都にこれほどの資産を持っているとはらなかった。
評価に添えられた写真を見て、さらに息をのんだ。ガラス張りのその建物には何度も入ったことがある。浩司の会社へ弁当や類を届けるたび、私は1階の受付で名をいていた。
父はあの受付を通る私を、どこかで見ていたのだろうか。古いエプロンのまま弁当を抱え、社員にをげていた娘が、実は建物の所者の娘だとは誰もらなかった。
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浩司でさえ、私が受付で待たされるたび「社の妻らしいをしろ」と責めるだけで、ビルの登記を調べようとはしなかった。
92億円というきさに浮かれる気持ちはなかった。むしろ、父が私に渡した責任のさで背筋が伸びた。
「相続するのは、私ですか」
「公正証遺言により、このビルは由美さんが単独で承継します。相続はお父様がくなった点で発しており、婚したから所できるわけではありません。婚姻であっても、浩司さんにこのビルの持分はじません」
父が内容を婚届の受理までらせなかったのは、浩司の本を確かめるためだった。同に、財産をった彼が婚届を引っ込め、私へ実印を押すよう迫ることも警戒していたらしい。
震える指でい封筒をくと、父のった文字が並んでいた。
『額に驚かなくていい。これは、おが誰かの顔ではなく、自分のできるために残す所だ。の言葉ではなく、そのが損をするときに何を選ぶかを見なさい』
読み終えるに文字がにじんだ。父は28、私が浩司に尽くす姿を責めずに見守りながら、最に自分で選び直せる所を残してくれたのだ。
伊藤先は、涙が落ち着くのを待ってから賃借覧をいた。5階の欄に、見慣れた会社名がある。
株式会社佐藤デジタル。
浩司が10に起業し、現40の社員を抱える会社だった。
その側には、赤い文字で《12か未納》と記されていた。額賃料650万円。未払いだけで7800万円に達している。
「お父様は3度、支払い計画の提を求めましたが、返答はありませんでした。4、このビルで緊急面談をきます。佐藤社には、所者の代理が席するとだけ伝えています」
父の葬儀から数えれば、ちょうど5。浩司はまだ、92億円のビルを誰が相続したのからない。
伊藤先は、相が元夫なら面談を延期できると言った。私は父のと婚届受理証を並べ、ゆっくりと首を横に振った。
「いいえ。私が席します。しい所者として」