"家族写真の左端" 第9話
「をた」
「それでも父のお兄さんです」
「おには分からん」
「分からないから、残してほしいんです」
その言葉に、源蔵が顔をげた。
清郎は必だった。
「写真がなくなったら、僕の妹たちは宗吉伯父の顔を度もらないままになります。その次の子どもたちもです。父が話さなければ、誰もらなくなる」
「それでいい」
「本当にそうっていますか」
源蔵の眉がいた。
「父は昨、伯父のことを話してくれました」
「……」
「何をやっても勝てなかったって」
源蔵は線を逸らした。
「嫌いだったのかと聞いたら、違うと言いました」
「もういい」
「だったら、どうして全部消すんですか」
清郎の声はし震えていた。
「伯父は父からを奪っていません。をたあとも、瀬を助けた。それなのに、そのがいた証拠までなくしたら……それこそ伯父に申し訳ないといます」
源蔵はい、何も言わなかった。
亀吉もを挟まず、ただっていた。
やがて源蔵が古い乾板の包みへを伸ばした。
をく。
に透かせば、い像が見えた。
若い宗吉の姿。
治345。
をる、母親に頼まれてった写真館。
源蔵はその乾板をじっと見ていた。
「この顔は昔から変わらんな」
突然、源蔵が言った。
清郎は驚いた。
「兄貴は写真を撮るでも、妙に真面目な顔をしていた」
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それは、宗吉について語られるさな記憶だった。
をた理由でもない。
を救った話でもない。
ただ、弟だけが覚えている兄の姿。
源蔵は乾板を机へ戻した。
「森川さん」
「はい」
亀吉が姿勢を正した。
「乾板は割らなくていい」
清郎が息をのんだ。
源蔵は息子を見なかった。
「ただし、今度は違えずに族だけの写真を焼いてくれ」
「もちろんです」
「最初の写真も……」
そこで源蔵は度言葉を止めた。
「枚だけ残す」
清郎の顔がるくなった。
「父」
「勘違いするな。へ飾るわけじゃない」
「はい」
「に見せて回るものでもない」
「分かっています」
「のアルバムに入れておくだけだ」
清郎は何度も頷いた。
源蔵はそんな息子を見て、わずかに顔をしかめた。
だがその表には、昨までの拒絶はなかった。
数。
森川写真館から、しく焼き直された族写真が届いた。
今度は乾板をねることなく、治42に撮した枚だけを正しく印画へ焼き付けたものだった。
写真の端には、もう誰もっていない。
背景のの柱が、はっきり見えている。
族だけの写真だった。
源蔵。
志乃。
清郎。
妹たち。
そしての子に座るきぬ。
志乃は写真を見て、堵したように笑った。
「これなら、ちゃんとした族写真ですね」
幼い娘たちも、自分の顔を指差して楽しそうに話していた。
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しかし清郎は、もう枚の写真を見ていた。
同じ構図。
同じ族。
同じ表。
ただし端に、い宗吉がいる。
亀吉の説を聞いたで見れば、恐ろしいものにはえなかった。
むしろ、議な気持ちになった。
宗吉はこの撮のにはいなかった。
治34に別の所で、別のいを抱えてっていた。
それが8の族写真へ偶然なった。
をた男が、偶然とはいえ再び瀬の族と同じ枚のへ戻ってきたのだった。
「本当に残すの?」
志乃が源蔵へ尋ねた。
「枚だけな」
「お義母さまは?」
源蔵はきぬの方を見た。
きぬは写真をに取り、しばらく宗吉の顔を見ていた。
今回は倒れなかった。
ただ目元がし赤くなった。
「このままでいいよ」
そう言った。
「幽霊みたいにいけどね」
清郎がわず笑うと、きぬもさく笑った。
「昔から目つ子だったのに、こんなだけく写るなんてね」
その言葉に、源蔵もほんのし元を緩めた。
族は初めて、宗吉のことを同じ部で話した。
志乃も、それまで夫に兄がいたことを詳しくらされていなかった。
「あなた、度も話してくれませんでしたね」
責めるような調ではなかった。
源蔵はし困った顔をした。
「話す会がなかった」
「会ではなくて、話したくなかったんでしょう」
「……そうかもしれん」
きぬはそのやり取りを黙って聞いていた。
清郎の妹たちは、伯父という関係そのものをうまく理解できていなかった。
「この、お父さまのお兄さまなの?」