"1億8400万円の夜逃げ" 第3話
佐藤はそう指示した。
結果を待つ、2016当の捜査資料も取り寄せた。担当していたのは渡辺健というベテラン刑事で、記録を見る限り、当の判断にはそれなりの理由があった。健には8000万円もの借があり、その直には額の宝くじ当選を受け取っていたうえ、本名義のパスポートで国していた。
さらに部から類の部がなくなっていた。通話記録も国直で途絶え、取りてをっていた業者とのトラブルについても確認されたが、主物にはアリバイがしていた。警察は、借取りから逃れるために健自が計画に本をれたと判断したのである。
ただし、点だけ佐藤の目に引っかかる記述があった。
《内にノート型パソコン1台。事件性乏しく、解析せず保管》
当の捜査員にとって、パソコンのまで確認する理由はなかった。自発失踪と判断された成男性の私物であり、何かの犯罪被害者である証拠もなかったからだ。だが今、その男のんでいた建物のから、の骨が見つかっている。
佐藤は倉庫に残っている能性を確認するよう指示した。
1週、DNA鑑定の速報が届いた。
佐藤はを受け取り、最初の数を流し読みした。性別は男性、推定齢は20代半から30代半で、2016にした能性がある。
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ここまでは健と致していた。
ところが、元照欄を見た瞬、佐藤の指が止まった。
そこにかれていた名は、健ではなかった。
鈴。
1988まれ。20167、28歳で方。
健が消えたのと、わずか数しか違わなかった。
鈴の方届は、20167に群馬県の族から提されていた。京都野区の古いアパートで暮らしながら国公務員試験の勉をしていた青で、突然連絡が取れなくなり、部には活用品の半が残されていた。へた記録もなく、座にもきなきはなかった。
佐藤は資料を最初から読み直した。健と鈴、とも1988まれで、学代の同級だったことがすぐに判した。しかもの通話記録には、方になる直まで健との連絡が複数回残っていた。
偶然と呼ぶには、あまりにもなりすぎていた。
は群馬県崎の決して裕福ではない庭で育った。父親の秀夫はさなで働き、母親の佳子は元の堂で調理補助をしていた。卓が豪華だったことは度もなかったが、正や盆には必ず族3で同じ卓を囲み、は両親の働く背を見ながら育った。
勉も運もび抜けてはいなかった。学の頃からいで、分い黒縁鏡をかけていたため、友からからかわれたこともあった。
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それでもの悪をほとんど言わず、頼まれると断れない性格だったと、に同級たちは話している。
両親は活を切り詰め、を京の私学へ学させた。休暇で実へ戻るたび、父の指の節が以より太くなり、母の腰がしずつ曲がっていくことには気づいていた。卒業すぐに民企業へ就職せず、公務員試験を目指したのも、将来の定を何より優先したからだった。
「くちゃんとした仕事に就いて、父さんと母さんを休ませたい」
母の佳子は、息子が何度もそう言っていたことを覚えていた。
佐藤が崎の両親のを訪ねたのは、DNA鑑定から3だった。ドアをけた佳子はすでに70歳くになり、堂の仕事から帰ってきたばかりなのか、エプロンをす途だった。警察帳を見せただけで彼女の目が揺れ、佐藤がまだ何も話していないうちから、「のことでしょうか」と尋ねた。
内には古い写真が飾られていた。学の入学式に撮ったもので、黒いスーツを着たが、分い鏡の奥でぎこちなく笑っている。写真のには、さなコップに入ったが置かれていた。
佐藤は事現から発見された男性の元がであることを、できるだけゆっくり説した。佳子はしばらく返事をせず、膝のに置いた両を握ったまま目を閉じた。
やがて息を吐くような声が漏れたが、それが泣き声なのか、ただ名を呼ぼうとしたのか、佐藤には分からなかった。