"7年目に開いた薬袋" 第2話
午130分頃。
黒い鞄を持って階段をりてきた妻に、帳簿をつけていた哲夫が顔をげた。
「どこへくんだ」
幸子は鞄をにしたまま答えた。
「へってくるわ。200万円、預けてくるから」
哲夫は特に驚かなかったという。
薬局ではきな額を扱うこともあり、妻がへ向かうこと自体は自然ではなかった。
「遅くなるのか」
「そんなにかからないとう」
幸子はそれだけ言うと、をた。
商へた彼女のろ姿を、哲夫はカウンター越しに見送った。
その、夫婦はどんな表をしていたのか。
幸子は何を考えていたのか。
に警察は何度も哲夫へ尋ねることになる。
だが午130分、薬局をていった紺のワンピース姿の幸子を、その確実に見たと証言するは現れなかった。
20以、毎のように町のどこかで見かけられていた女性が、その瞬から消えた。
午6になっても、幸子は戻ってこなかった。
最初のうち、哲夫はそれほど刻に考えていなかったという。のに買い物でもしているのだろう、誰かりいに会って話し込んでいるのかもしれないとっていた。
しかし6を過ぎても話がない。
7くになると、哲夫は落ち着かなくなった。
幸子は几帳面なだった。
予定が変われば必ず連絡する。に戻ると言ってし、何も何の連絡もせずに姿を消すようなことは、20の結婚活で度もなかった。
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哲夫はへ話をかけた。
「今、妻がそちらへっているはずなんですが」
担当者が記録を確認した。
返ってきた答えは、哲夫の予とは違っていた。
「幸子さんでしたら、本は来されていません」
哲夫は受話器を握ったまま黙った。
「違いありませんか。午に200万円を預けにくと言ってたんです」
「本の入記録にはございません」
話を切った、哲夫はすぐ所のへ連絡した。
幸子を見なかったか。
商へかなかったか。
誰かのにち寄っていないか。
何に話をしても答えは同じだった。
「今は見てないな」
「昼までは薬局にいたでしょう?」
「午からはらない」
夜8。
哲夫は警察へき、捜索願をした。
翌朝になると、幸子の失踪は町にれ渡った。
「あの幸子さんが?」
「何かの違いじゃないのか」
「昨、薬をもらったばかりだぞ」
薬局のには、何もの民が集まった。
しかしシャッターは閉ざされたままだった。
警察は本格な捜索を始めた。
広島県警から捜査員が入り、町の警察署に捜査体制が組まれた。になったのは、40代の佐々警部補だった。
佐々はまず哲夫から詳しく話を聞いた。
向かいって座った哲夫は、晩ほとんど眠っていないようだった。目は赤く、顔は青ざめていた。
「奥様が最にをたの様子を、もう度教えてください」
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「午130分頃です」
哲夫は途切れ途切れに答えた。
「へ200万円を預けると言いました。紺のワンピースで、黒い鞄を持っていました」
「普段と違う様子は?」
「ありませんでした」
「夫婦ので何か問題は?」
哲夫はく首を横に振った。
「ありません。妻とは20緒にいます。を守るです。何も言わずにいなくなるなんて絶対にありません」
言葉の途で、哲夫の目から涙が落ちた。
「何かあったんです。お願いします。妻を見つけてください」
佐々警部補は、その様子を黙って観察した。
なくとも、その点で哲夫の態度にらかな自然さをじることはできなかった。
聞き込みは町全体へ広がった。
警察は商の民や患者、幸子と付きいのあった々に尋ねた。
悩みはなかったか。
誰かと揉めていなかったか。
銭トラブルはなかったか。
異性関係は。
しかし返ってくる言葉は驚くほど似ていた。
「幸子さんは本当にいいでした」
ある女性は、数の来事を話した。
「うちの母が体調を崩して薬を取りにけなかったんです。そうしたら幸子さんが自転で届けてくれました。だったのに」
別の齢男性は、声を詰まらせた。
「私は用もないのに薬局へってたんです。幸子さんと話すとするから。あのが自分から逃げるなんて考えられん」