"消された母の名前" 第7話
里美が学へきたいと言った、反対しながらも、学費の分を自分の貯からしていた。
それでも、諦めた物の代わりに娘のを所していいわけではない。
父の録音は続いた。
『直子さんから、里美へが来た。清子は渡さないと言う。私は預かっている』
里美は息を止めた。
。
父は捨てていない。
具箱の底をもう度調べたが、見つからなかった。
清子が持っている能性がある。
翌、里美は母へ尋ねた。
「直子さんから、私宛てのが来てたでしょう」
清子は居で洗濯物を畳んでいた。
「らない」
「お父さんの録音を聞いた」
清子のが止まった。
「どこにあるの?」
「捨てた」
「本当に?」
「昔のことを、いつまで調べるの」
「私が納得するまで」
清子はタオルをく畳んだ。
「直子は、あなたを育てなかった」
「また、それ?」
「をくだけなら、誰でもできる。をしたあなたを病院へ連れていったのは私。学でいじめられた、先に話したのも私。学へくをしたのも私」
「だから、を隠していいの?」
「あなたは、私より直子を選ぶ」
「まだ選んでないでしょう!」
里美の声がきくなった。
清子が肩を震わせた。
りではなく、怯えているように見えた。
「お母さん」
里美は声を抑えた。
「私が直子さんに会ったからって、お母さんと過ごした53が消えるわけじゃない」
広告
「消える」
「消えない」
「あなたには分からない」
清子はちがり、自へ入った。
そのの夜、母は夕を取らなかった。
翌朝、里美が起きると、卓に古い缶が置かれていた。
には、黄く変した封筒が12通入っていた。
すべて里美宛て。
差は川島直子。
20歳、21歳、23歳、25歳。
誕や就職の節目に送られている。
最のは、里美が30歳のだった。
封はつもけられていなかった。
「読まなかったの?」
里美が尋ねると、清子は台所で背を向けていた。
「読んだら、捨てられなくなるとった」
「捨ててないでしょう」
「お父さんが隠してた。くなったあと、見つけた」
「それでも私に渡さなかった」
清子は答えなかった。
里美は12通を自へ持っていった。
すぐにはけられなかった。
53歳の自分が読むには、遅すぎるだった。
だが、20歳の自分へ届くはずだった言葉を、今からでも受け取ることはできる。
最初の封筒をけた。
《里美さんへ。私は、あなたを産んだです》
は、その文から始まっていた。
直子のには、言い訳がほとんどかれていなかった。
《私は、あなたを育てることができませんでした》
《会いにかなかったのではなく、けなかったと言いたい気持ちがあります。でも、それは私の側の事です。あなたにとっては、どちらも同じだといます》
20歳の里美へ向けた最初のには、清子と孝雄がどれほど切に育てているかをっているとかれていた。
広告
《私が母親だと名乗ることで、あなたの族を壊したくありません。ただ、らないままにされることも違うとい、このをきました》
《会いたくなければ、返事はいりません》
21歳のには、学活について尋ねる言葉があった。
23歳のには、孝雄から就職先を聞いたとかれていた。
《旅の仕事を選んだそうですね。私はくへくことが苦なので、らない町へを連れていく仕事ができるあなたを、勝に派だとっています》
25歳のには、清子への謝と嫉妬がかれていた。
《姉さんがあなたの母親であることは、分かっています。それでも、あなたが姉さんを「お母さん」と呼んでいると聞くと、胸が痛みます。そんな自分が嫌になります》
直子は、清子を憎みながら謝していた。
娘を奪った姉。
娘を育てた姉。
どちらか方ではなかった。
最のは、里美が30歳になったにかれている。
《これでを最にします。返事がないことを、あなたの答えとして受け取ります》
《私は、あなたに許してほしいとはいません。ただ、あなたがまれたのことだけは伝えたいです》
産はのだった。
病院の窓から、くなった根が見えた。
まれた里美は、なかなか泣かなかった。
直子は、自分の子どもがこのまま息をしないのではないかとい、何度も名を呼んだ。
最初につけようとした名は《恵》だった。