"15年後に消えた罪" 第1話
198428。
京・世田の宅は、いつもより静かな夜を迎えていた。
朝からり続いたたいは、夕方になる頃にはさらにまり、古い造宅の隙を通り抜けていた。戦から残る々が並ぶ細いでは、民たちはめに戸を閉め、灯油ストーブのを頼りに寒さをしのいでいた。
この頃の世田は、現のようなきな宅とはし違っていた。
昔ながらの商、さな、み続ける齢者の。
隣所の顔を誰もがり、困ったには自然に声をかけう。そんな古い京の空気がまだ残っていた。
その静かな町の角に、の老が暮らしていた。
名は藤商司。
72歳。
妻を8にくし、それ以来、古い造階建てので暮らしを続けていた。
藤のは、昭の初めに建てられた古いだった。
黒くなった柱。
し傾いた廊。
になるとたいが入り込むの窓。
決して裕福な暮らしをしているようには見えなかったが、藤には誰にもられていない財産があった。
彼は、さな貿易会社で経理の仕事をしていた。
派な活をすることはなく、料のくを貯に回していた。
退職も質素な暮らしを続け、さらに京の別の所に3つの賃貸アパートを所していた。
賃収入があったため、活に困ることはなかった。
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しかし、藤自はその財産を誰かに自することもなかった。
所のたちがっていた彼は、ただの無な老だった。
「藤さんは昔から真面目なだったよ」
所の商主はにそう語っている。
「でも奥さんがくなってから、ますますと話さなくなったね」
妻をくしてから、藤はすることがなくなった。
買い物にるも決まっていた。
必な物だけを買い、誰とも話をしない。
所付きいも最限だった。
それでも、彼を気にかけるはいた。
週に3回、藤のを訪れていた女性。
介護の仕事をしていた佐野恵美里だった。
38歳。
婚経験があり、子供はいなかった。
恵美里は数から介護士として働き、齢者のを訪問して活の伝いをしていた。
掃除。
料理。
買い物。
には病院への付き添い。
藤にとって、彼女は数ないとのつながりだった。
恵美里は派な女性ではなかった。
背はく、細。
い黒髪で、いつもなのを着ていた。
所のたちは、彼女についてこう話していた。
「礼儀正しいだったよ」
「藤さんにも丁寧に接していた」
「まさか、あんなことになるなんてわなかった」
当、誰もの関係を疑うことはなかった。
藤は必以に話さない。
恵美里も仕事以のことを聞かない。
ただ老と介護士。
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それだけの関係に見えていた。
しかし、その。
ので何かが起きていた。
それをる者は、まだ誰もいなかった。
1984のは、京でも特に寒いだった。
12から厳しいえ込みが続き、2に入っても気温はなかなかがらなかった。
古い造宅では、灯油ストーブが欠かせなかった。
当、くの庭で使われていた器具だった。
く、かく、簡単に使える。
しかし同に、災の危険もあった。
特に古いでは、度が燃え広がれば止めることは難しい。
藤のも例ではなかった。
28の夕方。
所の民が異変に気づいた。
最初に見えたのは、階の窓から漏れるいの煙だった。
「……あれ?藤さんの、煙がてないか?」
の民が空を見げた。
最初は誰もきな事だとはわなかった。
古いだから、ストーブの煙かもしれない。
そう考えたもいた。
しかし数分。
煙は急激に濃くなった。
そして階の窓から赤い炎が見えた。
「事だ!」
誰かが叫んだ。
所のたちは慌ててへびした。
ある者は消防へ話をかけ、ある者は藤の名を叫びながら玄関へ向かった。
「藤さん!」
「いますか!」
しかし返事はなかった。
玄関の扉には鍵がかかっていた。
から物音もしない。
炎は瞬くに全体へ広がっていった。
古い造宅は、まるで乾いたのように燃えていく。
20分、消防隊が到着したには、階部分はすでに炎に包まれていた。