"余命半年からの再出発" 第12話
「よかった」
佳代子は、夫の言葉を疑わなかった。
自分勝なでも、佳代子のを望んでいたわけではないのだろう。
ただ、妻を配する気持ちと、自分の都を優先するが、同じのにあった。
「あなたも元気で」
佳代子は言った。
「佳代子」
「何?」
「本当に、悪かった」
佳代子はしばらく夫を見た。
「許すかどうかは、まだ決めない」
誠はさく頷いた。
「でも、謝ったことは覚えておく」
それが2の最の言葉になった。
佳代子は振り返らず、志津子の待つ駅へ向かった。
夫婦だった33は消えない。
傷つけられた最の1も消えない。
どちらか方だけを本当の結婚活にする必はなかった。
治療始から1半、佳代子は60歳になった。
髪はくえ揃い、以よりし柔らかな癖がついた。髪を染めるか迷ったが、しばらくそのままにしている。
《青いの子》の注文は、に20件ほどになった。
では作り切れないため、以の直しで働いていた仲に週2回伝ってもらっている。病気や治療の事があるには納期をめに伝え、急ぎの注文は受けない。
売を優先しすぎない。
体調が悪ければ休む。
に度は、何の予定も入れないを作る。
それが佳代子のしい働き方だった。
奈緒は治療の検査を続けながら、販売ページの管理を伝っている。
広告
最初に作った赤い子は褪せてきたが、今も使っていた。
「しいの作りましょうか」
佳代子が言うと、奈緒は首を振った。
「これは最初の個なので、捨てません」
「物は使えば古くなるのよ」
「古くなったら、直してください。直しが本業でしょう」
には、子の修理依頼も来るようになった。
伸びた縁。
ほどけた刺繍。
くなった裏。
佳代子は品を作るより、修理する方が好きだった。
傷んだ部分をし、残せる所を確認し、別の布をす。完全に元へ戻るわけではないが、以とは違う形でまた使えるようになる。
自分のに似ているとった。
志津子とは、に2度ほど会っている。
仲の良い姉妹へ完全に戻ったわけではない。母親の介護の話になると、今でも互いに言い過ぎることがある。
ただ、以のように7連絡を断つことはなくなった。
腹がてば度話を切り、翌また話す。
「昨は言い過ぎた」
どちらかがそう言えば、相もしだけ謝る。
翔太は京で働き続けている。
以より連絡は増えたが、毎週ではない。1か何も来ないこともあり、佳代子は以ほど催促しなくなった。
息子には息子の活がある。
それでも誕には話が来た。
「何か欲しい物ある?」
翔太が尋ねた。
「別にない」
「そう言うとった」
「なら聞かないでよ」
「本当にないの?」
広告
佳代子はし考えた。
以なら、息子に負担をかけないよう、何もいらないと言っただろう。
「で使うさなアイロンが欲しい」
「分かった。選んで送る」
「い物じゃなくていいから」
「そこは俺が決める」
数、温度調節のできる型アイロンが届いた。
佳代子は素直に受け取った。
頼ることと、依することは違う。
欲しい物を伝えることと、相にすべてを背負わせることも違う。
60歳の誕の午、佳代子は病院で定期検査を受けた。
今回も再発を示す所見はなかった。
医師は「順調です」と言った。
佳代子はびながらも、その言葉へ全部を預けないようにしていた。
次の検査で何か見つかるかもしれない。
別の病気になるかもしれない。
事故に遭う能性だってある。
病気になるの佳代子も、本当は同じ確かなをきていた。ただ、自分だけは当分なないとっていただけだ。
病院をると、桜が咲いていた。
治療、奈緒が「来の桜を見たい」と言ったことをいす。
佳代子は桜の写真を撮り、奈緒と志津子と翔太へ送った。
《今も見られました》
奈緒からすぐに返事が来た。
《来も予約しておきましょう》
佳代子は笑った。
帰宅すると、玄関につの袋が置かれていた。
には、古い紺のマフラーが入っている。
誠が使っていた物だった。
添えられたには、い文章がかれていた。
《を理していたらてきました。佳代子が編んだ物なので、返します》