"余命半年からの再出発" 第11話
「だから、もう戻さない」
誠の顔が歪んだ。
「病気になって、たくなったな」
以なら、その言葉に傷ついただろう。
今は違った。
「病気になるから、たくなる練習をすればよかった」
佳代子は扉を閉めた。
誠はしばらくチャイムを鳴らしたが、佳代子はなかった。弁護士へ連絡し、必なら警察を呼ぶとメッセージを送ると、ようやく帰っていった。
玄関のが静かになったあと、佳代子はそのへ座り込んだ。
くなったつもりだった。
それでも涙がた。
夫を追い返したことがしいのではない。
戻ってきた夫を見ても、以のようにうれしいとえなかったことがしかった。
33、本当に終わるのだと分かった。
作業部へ戻る。
縫いかけの子が机にある。
注文者は、乳がんの治療を始める60代の女性だった。希望はい桜。族に配をかけたくないので、顔がるく見えるがいいとかれていた。
佳代子は針を持った。
涙で縫い目が見えない。
その夜は、作業をやめた。
無理にへむことだけがさではない。
泣くは泣き、できないは休む。
治療を通して、それも覚えていた。
翌朝、志津子へ話した。
「昨、誠が来た」
「へ入れたの?」
「入れなかった」
「偉い」
「偉いって言われると腹がつ」
「じゃあ、よくやった」
「同じでしょう」
姉と話しているうち、佳代子はし笑えた。
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最の治療から6週、佳代子は効果を確認する検査を受けた。
結果を聞くは、志津子と翔太が病院へ来た。
「2も来なくてよかったのに」
佳代子が言うと、志津子は呆れた顔をした。
「連絡しろと言ったのは誰?」
「連絡はしたけど、来てとは言ってない」
翔太も言った。
「来るかどうかは、連絡された方が決めるんだろ」
以、息子から言われた言葉だった。
佳代子は反論できなかった。
診察には、佳代子で入った。
医師はしい画像と、治療の画像を並べた。
以は胸や腹部にいくつもあった病変が、ほとんど確認できなくなっている。血液検査の数値も改善していた。
「現点では、完全寛解と判断できます」
医師が言った。
佳代子は、すぐにはべなかった。
「治ったということですか」
「今の検査では病気が確認できない状態です。ただし、再発の能性がゼロになったわけではありません。今も定期に検査を続けます」
「またてくるかもしれない?」
「能性はあります」
佳代子は膝ののを見た。
完全寛解。
完全という言葉のあとに、確かな未来が続く。
「でも、今は病気が見えないんですね」
「はい」
医師は頷いた。
「ここまで、よく治療を続けましたね」
その言で、涙がた。
夫に捨てられたから続けたのではない。
息子のためでも、姉のためでもない。
吐き気がする朝に薬をみ、がた夜に助けを求め、かない指で針を持ったのは佳代子自だった。
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医療者に支えられ、姉や息子や友の力を借りた。
それでも最に治療を受けると決め、病院へ通ったのは自分だった。
診察をると、志津子と翔太がちがった。
「どうだった?」
2が同に尋ねた。
佳代子は泣きながら笑った。
「今は、見えないって」
志津子が抱きしめた。
翔太も隣で目を赤くしていた。
3で病院の堂へった。
佳代子は治療を始めたにべたいとったクリームパンをいした。
帰りにあるパンへ寄る。
棚には、同じ形のクリームパンが並んでいた。
「これがべたかったの?」
翔太が尋ねた。
「そう」
「もっとい物にすればいいのに」
「べたい物に値段は関係ないでしょう」
3でののベンチへ座り、クリームパンをべた。
っていたより普通のだった。
特別においしいわけではない。
それでも佳代子には、半かけてたどり着いただった。
婚調も、同じに成した。
自宅は売却せず、佳代子がみ続けることになった。誠が受け取る財産分与分については、預と分割、交際に使い込んだ共財産などを調したうえで解決した。
佳代子は部の預を失った。
それでもは残った。
誠とは、裁判所をるに最の会話をした。
「治療、終わったんだってな」
「翔太から聞いたの?」
「ああ」
「今は寛解。これからも検査はある」
「そうか」
誠はし笑った。