"消えた実印" 第11話
「はい」
織は正直に答えた。
文はし腹がった。
同に、正直に話してくれたことをありがたいともった。
完全な善などいない。
苦しくなれば、自分に都のいい解決を考える。切なのは、考えたあとに何を選ぶかだ。
「あなたが度そう考えたこと、忘れないからね」
文が言うと、織は頷いた。
「はい」
「でも、正直に言ってくれたことも忘れない」
織はし笑った。
嫁と姑のに、急に美しい絆がまれたわけではない。
ただ、互いに都の悪いことも言える所が、ほんのしでき始めていた。
織は、婚届の証欄に署名してほしいと文へ頼んだ。
「私でいいの?」
類をに、文は何度も確認した。
「お義母さんにお願いしたいんです」
「由紀でも、あなたのご両親でもいるでしょう」
織の両親は州にんでいる。父親は持病があり、母親はその介護をしていた。達也の借についてはまだすべて話していないという。
「うちの両親は、私が婚すると言えば配して、すぐにこちらへ来ようとします。今は、お義母さんと由紀さんに支えてもらえているので、落ち着いてから話したいんです」
「でも、私は達也の母親よ」
「だからお願いしたいんです」
織はまっすぐ文を見た。
「達也さんの族だから婚に反対するのではなく、私のを見て署名してほしいんです」
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文はペンを持った。
名をくことは簡単だった。
だがそので、18続いた息子夫婦の関係が終わるようにじた。
達也が紋付き袴を着た結婚式。
織が緊張した顔で「これからよろしくお願いします」とをげた。
美がまれ、病院の窓越しにさなを見た。
正に4で餅をべ、には庭でをした。
それらまで消えてしまうわけではない。
分かっていても、がかなかった。
「お義母さん」
織が静かに言った。
「無理なら、別のに頼みます」
「違うの」
文は首を振った。
「達也が、いつか元に戻るんじゃないかとってるだけ」
「私も、何度もそういました」
「戻れない?」
織はすぐには答えなかった。
「借だけなら、緒に返す方法を考えたかもしれません。でも、美の貯を使ったことを問い詰めた、達也さんは言ったんです。学へくかどうかも分からない娘のより、今の自分の方が事だと」
文は目を閉じた。
「それから、私がお義母さんのを守ろうとした、達也さんは、母親はいずれぬんだからは自分の物になると言いました」
「そう」
「その言葉を聞いてから、元に戻りたいとえなくなりました」
文は婚届へ署名した。
《野文》
ゆっくり、読み違えられないようにいた。
印鑑は認印を使った。
「ありがとう、ございます」
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織がをげた。
「お礼を言われることじゃない」
「いいえ。普通は、息子の妻から婚届をされたら、止めたくなるといます」
「止めたいわよ」
文は正直に答えた。
「でも、止めたいことと、止めていいことは違うでしょう」
織の目が潤んだ。
文は今度は迷わず、テーブルののティッシュ箱を差しした。
「ハンカチは返してもらってないから」
織は泣きながら笑った。
「洗ってあります」
「今度持ってきて」
「婚したあとも、来ていいんですか」
文は驚いた。
「来ないつもりだったの?」
「私は、もうお義母さんの嫁ではなくなりますから」
「嫁じゃなくなったら、18ってるが急にになるの?」
織は答えなかった。
文も、自分の言葉について考えた。
織を族だと言い切れるのか。
息子と婚したあとも、以と同じ関係を続けられるのか。
美がいなければ、しずつ疎になるかもしれない。
それでも、今すぐ「」と呼ぶ気にはなれなかった。
「なくとも、活メモを途でやめられたら困るわ」
「それが理由ですか」
「事なことでしょう」
2は笑った。
婚の話しいは、簡単にはまなかった。
達也は最初、婚届への署名を拒否した。織が財産を隠している、母親を利用して自分を追いそうとしている、と主張した。
しかし弁護士を通じて、会社への返済、借入先、使い込んだ美の貯について資料を示されると、しずつ態度を変えた。
会社との示談については、達也が自分の退職、、計などを処分して返済することになった。