"消えた実印" 第3話
以より髪も増えていた。仕事が忙しいとは聞いていたが、正に会ったから、どこか疲れているように見えた。
「あなたたち、うまくいってないの?」
「何でそうなるんだよ」
「織さんが勝にの印鑑を持ちすなんて、普通じゃないでしょう。で何かあるんじゃないの」
達也は苦笑した。
「夫婦なんて、どこもいろいろあるよ」
「美ので喧嘩してないでしょうね」
「してない」
達也はそう答えたあと、話題を変えるように仏壇へ向かった。
引きしをけ、通帳と印鑑登録証を確認する。権利証をに取ると、表をめくってを見た。
「何してるの?」
「本当に実印だけなくなったのかとって」
「権利証も通帳もあるわよ」
「そうだな」
息子は権利証を戻した。
だが、そののつきが妙に慎だった。
文はし気になったものの、く考えなかった。
昼、達也は織と話してから連絡すると言って帰った。玄関をる際、「らない業者から話があっても、何も答えないで」と言った。
「業者って?」
「最、齢者を狙った詐欺がいから」
「そんなこと分かってる」
「のためだよ」
また、のため。
文はその言葉を聞くたび、自分が何も判断できない寄りとして扱われているような気がした。
午、娘の由紀が来た。
由紀は42歳で、夫と学の息子と暮らしている。実からで1以かかるため、普段はに度ほどしか来なかった。
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「お兄ちゃんから聞いた」
コートを脱ぐなり、由紀は言った。
「織さんが実印を持っていったんでしょう?」
「本が認めた」
文はメッセージを見せた。
由紀は画面を読み、眉を寄せた。
「警察に言った方がいいんじゃない?」
「族のことだから、まず返してもらえれば」
「甘いよ。勝にの実印を持ちしたんだよ。もし何かに使われてたらどうするの」
由紀の言葉を聞くうち、文のはさらにきくなった。
の名義を変えられているかもしれない。
借の保証にされるかもしれない。
文には詳しいことは分からないが、実印が切な物であることだけはっていた。
「お母さん、織さんに通帳を見せたりしてない?」
「見せるわけないでしょう」
「暗証番号は?」
「誰にも教えてない」
「お兄ちゃんにも?」
「達也はってるけど、あの子は関係ないでしょう」
由紀が瞬、何か言いたそうな顔をした。
「何?」
「別に。ただ、お兄ちゃんだけは丈夫って決めるのも危ないんじゃないかとって」
「達也は私の息子よ」
「織さんだって、18族だったでしょう」
文はになった。
「棒と同じことをしたを、族とはえない」
由紀はそれ以反論しなかった。
代わりに、織がいつも置いているという連絡ノートを探し始めた。
話台のに、い緑の学ノートがあった。表には《文さんの活メモ》とかれている。
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「こんなの、いつからあるの?」
由紀が尋ねた。
「半くらい。織さんが勝につけ始めたのよ」
ノートには、文の血圧、薬の残り、買い物をした、蔵庫のなどが細かく記録されていた。
《112 血圧138/82。朝の薬が1錠残っていたため確認。本はんだと話す》
《119 蔵庫に同じ豆腐が4丁。本は売りだったと説》
《22 ガスコンロ側、消し忘れあり。本には伝えず、元栓を閉める》
《214 郵便受けに気料の督促。支払ったと言うが、振込票が未使用》
文は途から読むのが嫌になった。
「の失敗ばかりいてるのよ」
「でも、ガスの消し忘れは危ないでしょう」
「消し忘れたんじゃない。煮物をましていたの」
「をつけたまま?」
「だったのよ」
由紀は黙ってページをめくった。
最の数ページは、跡が乱れていた。
《38 産会社から再度話あり。文さんは「息子に任せている」と回答》
《311 達也さんへ確認。本は営業話だと説》
《315 印鑑登録証と実印の保管所を確認。危険性あり》
《318 文さんからの査定について質問される。まだ説できず》
由紀のが止まった。
「産会社から話が来たの?」
文は首を振った。
「覚えてない」
「息子に任せてるって答えたらしいよ」
「そんなこと言うわけないでしょう」
「織さんが嘘をいたの?」
「私をぼけたことにしたいんじゃないの」